« 種々雑多・・・司会研修会を終えて(井手一男) | メイン | 言霊の競演 (加藤直美) »

2004年09月12日

「火葬場」にて・・・(加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

9月12日(日)
葬儀は、非日常の世界。
そして火葬場、さらに非日常の場所。
故人の肉体と離れ離れにならざるを得ない深い悲しみが交差する遺族にとっては、残酷すぎる現実の世界。

火葬場スタッフのお客様とのやり取りのレベルは、地域によって大きな差がある。
火葬場の成り立ちについてはもっと勉強をしたいと思っているが、ある火葬場の庭の隅に創立者の銅像がある。そしてその方は宗教者にも似た研鑽を積みそこに至るという紹介だった。つい先日の親戚の葬儀で火葬場まで同行した。お骨を拾う最後まで身内としてその市営斎場を体験した。

叔母のお骨を拾う時、その火夫さんの出で立ちは、薄汚れたマスクによれよれYシャツの腕まくりだった。そしてきれいに焼け残った叔母の大腿骨をすりこぎのような棒で、私たち遺族の目の前で思いっきり「コン!」と音を立てて割った。しかも左手に持つ、ちりとりのような形をした、骨を受ける銀色の入れ物で、私たちに「こっちにおいで」という身振りまでした。さらに右手に持った刷毛で「もっと離れて」という身振りもした。「そこのお箸で」「並んで」「近い人」と単語でだけしゃべり、右足に重心を置いた休めの体勢で骨を集め、収まりきれないので壷の下の方の骨を棒でくずせというようなことを私たちに告げた。(マスクをしていて聞き取りにくい。私たちには指示命令、強制というようにしか聞こえなかったが)誰も前へ進まないと「早く」というような目線を投げかける。しかたなく長男がすりこぎのようなその棒を持って悪戦苦闘。「ぎりぎり」という骨を砕く音が耳に残る。ろうそくに火がつきにくいと「チッ」と舌打ち。「終わりです」で本当に終わり、私たち遺族を見送ることも無くサッサと台を引っ張って裏へと消えた。あまりに失礼な態度に、ただ呆然とする遺族が残された。

そういえば火葬場案内として行った東京近郊S県の行政のH広域斎場での苦い経験。
初めてのその場所で手惑い控え室の準備に遅れると「遅いわねえ。ナニしてんのよ!」と、そこの女性職員に怒鳴られた。私が住む都内の民間斎場は7~8年前に比べれば職員の年齢も若返りとても感じが良くなった。施設料が高いとか安いとか、タダだとかの問題ではない。私は民間斎場の火夫さんが帽子をきちんと脱いで最敬礼する様子や、遺族に丁寧にお骨の部位の説明をする素晴らしい応対を知っているから、そうではない火葬場の許せない様子が目についてしまうのかも知れない。

火葬場という仕事に対しての自身の後ろ向きさが、言葉や態度に出るのであれば、胸をはってこの仕事をして欲しいと願わずにはいられない。
遺族は身近な人の「死」以外のことで、これ以上悲しみたくはないのだから。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2004年09月12日 00:53

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mcpbb.com/blog/mt-tb-funet.cgi/913

(C)MCプロデュース 2004-2013 All Rights Reserved.