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2005年03月07日
私がまだ20代、人材派遣のスタッフとして、 神奈川県K市の葬祭業者に通っていた頃の話です。 ある町内会館で執り行われたお葬式。 住宅街の中に寄り添うように立っている、古くて小さな会館でした。 この地域のお葬式では度々利用される町内会館ですから、 葬祭業者も使い慣れていましたが、 同様に弔問客にとっても勝手知った居心地の好い空間でした。
だからというわけではないでしょうが、 その日のお葬式はどこか散漫な感じがしていました。 私はスタッフの一人として、焼香回りの案内などを担当していたのですが、 表周りで、出棺を見送るべく待機されている人たちの世間話が いつしか盛り上がり、時折大声が式場内にも届いていました。 風爽やかなポカポカ陽気で、つい気も緩みがちだったのでしょうか。 ふと見ると、町内の世話役の人たちも固まって煙草を吹かしながら、 ニコニコと談笑しています。 益々話が弾んでいるようです。
ところが、この町内会館の隣の建物は、 何とか組という怖い筋の方の事務所になっていて、 お葬式の時だけは、地域への配慮か、はたまた人情か、 人や車の出入りを極力遠慮してくれていたのです。 ああ、それなのに・・・。
式場の外では、出棺待ちの会葬者が相変わらず賑やかに歓談の最中・・・。 式場内とはまったくの別世界が展開され、嬌声が上がるようになりました。 これはいけない。 遺族や親族の方々も顔をしかめています。 場内に居た私は、人の流れが落ち着いたら外に出て、 『読経中でございますからもう少しお静かにお願いします』程度のことは 言いに行こうと思っていた矢先。
それまで我慢に我慢を重ねていたのでしょうか。 突然、隣接する建物の二階の窓が開いて、堪りかねて吐き出されたかのように、 『手前ら、葬式やってんだから静かにしろ!』 葬式なのにザワザワとうるさい表周りの弔問客に対して、 窓から顔を出した怖いお兄さんが怒鳴りつけました。 『俺らや**もんが遠慮して静かにしてんのによ、お前ら最低だな!』 お兄さんの怒りは収まりません。 更に言葉が続きます。 『常識っつうもんがねえのかよ、どいつもこいつもいい年こいてよー!』
皆、見事にシーンと静まり返りました。 まったく正論です。 それ以降出棺まで、恥ずかしいのと、隣のお兄さんが怖いのとで、 誰一人口を開きませんでした。 まるでお葬式が、一部と二部に分かれていたみたいでした。
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投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2005年03月07日 03:30
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