ビマは私と性格がそっくりだったから、言葉なんていらないくらい、
思っていることも考えていることも、以心伝心、よくわかった。
英語がからっきし駄目な私を思ってか、二人とも、
カタコトの日本語を一生懸命覚えてくれた。
ビマにはアドボというとても美味しいフィリピン家庭料理も教わった。
ビマはスペインの血を引いていて、とても美しく無邪気で、
ノエルさんはとても礼儀正しく、頭も良く、繊細で仕事熱心な人だった。
声はエルトンジョンそっくりで、
バラード物なんて歌わせたらメロメロになるくらい魅力的だった。
帰り際には必ず
「きょっこさん、気を付けてぇ、ビーケアフルよぉ」
とハグしてドア口で二人は見送ってくれた。
彼らが契約期間の半年を過ぎて、フィリピンに帰るときには、
とても悲しかったが何故か涙は出なかった。
いつかこの日が来る事を知っていたから・・・。
私は二人と抱き合って空港で別れた。
半年間べったりと共に過ごした彼らが、
今、何処で、何をしているか知るよしもない。
ただ三人で過ごした日々だけが、心の奥で今も輝いている。
こうして人は、出会いと別れを繰り返しながら、
喜びや悲しみが混在しながら巡っていく日々の中で、
心の成長を遂げていくのかも知れない。
だからこそ、私は一期一会さえも大切にして、
日々暮らしていきたいと思っている。