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2005年05月08日
まもなく(株)綜合ユニコムさんから発売される 「葬送BGM第2弾」を作曲させていただいた。 葬儀に様々な音楽が使われるようになって久しい。 「音楽葬」という葬送の形も今や都内近郊では当たり前になってきた。 しかし「音楽」と言っても、それを使う場所は葬儀という特殊な場所である。 普通のイベントで使うBGMのようなわけにはいかない。
私が「音楽葬」の司会進行をさせていただく時には、 故人が好きだった音楽、又は故人を送るにふさわしい音楽で、 遺族が流して欲しいという音楽のリクエストを尋ね、 まずその音源(CD、MD、レコード、楽譜)があるかどうかの確認をする。 遺族の手元に無い場合、我が家の本棚やレコード棚の中から、 又街のCDショップを探すこともある。
そしてその音楽を献奏として目立たせるか、BGMとして流すかの確認をする。 数曲ある場合はその時間(1コーラスでいいか)と曲順を確認する。 最近は歌入りの音楽を葬儀で使うことも多くなった。 しかし歌入りの曲の使い方はもっと難しい。 ごあいさつのBGMで流して欲しいと遺族が強く希望する場合を除いて、 歌詞とあいさつの言葉がぶつかってどっちつかずになることを説明し、 あいさつのバックとしては使わない。 会葬者は歌詞の方を聞いてしまい、 あいさつを聞いていないということにも陥る。 音の大きさ、スピーカーの向きなど・・・。 あげたらきりが無いほど、気をつけることがある。 「葬儀に音楽を使う」と一言で言っても様々なことに配慮し 綿密な打合せをしないと、式そのものを壊すこともあるので注意したい。
ミュージックセラピストの現場では、クライアントの人生の中で幸せだった頃、 輝いていた頃の音楽を歌ったり聞いたりして懐かしむことがある。 懐かしむ音楽だからといって対象者はお年寄りだけとは限らない。 音楽をつかいリラックスして、心身の状態が楽になったり 和らいだりするための目的につかうのだが、 その時に気をつけなくてはいけないのは、その音楽を聞くことで、 時にはマイナス的な感情が蘇えってしまうことがあるということだ。
特に葬儀の場合、その音楽が故人と遺族の共有した思い出である場合。 具体的に言えば、故人が好きで、闘病中に病床で聞いていた思い出の曲でも、 それを聞いて闘病生活を思い出すのは、紛れも無く葬儀に参列する遺族であり、 死から間もない段階でその音楽を聞くことで、その辛い思いをトラウマとして もう一度思い出し、フラッシュバックという苦しい体験につながることがある。
私はそのような音楽をリクエストされた場合、 必ず前もって、そういう状態になることもあるという事実をお伝えする。 すると取りやめる方もいる。 「亡くなった方のことを落ち着いた気持ちでゆっくりと思い出せる時が、 必ずやって来ます。その時にゆっくりと聞かれたらいかがですか?」 とアドバイスをすると 「その時まで大切な品物として持っています」 とおっしゃる方もいる。
私自身が今年に入って入院と手術という体験の中で、手術台の上で 麻酔が効くまでの間、気に入っている音楽をBGMとして 流してもらえたという話を以前のエッセイにも書いたが、 その入院と手術そのものが私にとっては大きなストレスだったようで、 実は手術後の気持ちの落ち込み状態がしばらく続いた。
昨年からの疲れやストレスもその要因ではあったが、 手術の前のあのナンともいえない怖さは今でも時々思い出す。 頭では「こんなの平気!」と思っていても、 心は「怖いことは、怖い」と、正直に叫んでいたのだ。 私はそういう思いを抱えながら手術台で聞いたあのお気に入りの曲が、 未だに聞けないのである。 何回か聞こうと思いCDプレーヤーにセットしたが、やっぱり聞けない。 その曲を何気なく聞けるようになるには、もう少し時間がかかりそうだ。
音楽は、人の心と体を癒し、ほぐす大きな力を持つ。 しかし一歩間違えれば、辛い苦しみを与えるということも、 悲嘆の心理を持つお客様を対象に仕事をする私たちは、知らなければいけない。
第2弾の葬送BGMは、葬儀の中で聞いてくださる遺族や会葬者に、 曲そのものへの先入観を与えないオリジナル作品である。 今回は悲しみの中にも前を向いて歩いて行く 「遺された方々への想い」をテーマに作曲させていただいた。 そして何よりも、ナレーションをのせやすい、 落ち着いた呼吸につながるテンポ(曲の速さ)に気を遣った。
葬儀の中での遺族の目的は、亡くした大切な人を思い、ゆっくりと悲しむこと。 その落ち着いたゆるやかな時間を演出してあげることは、 葬儀スタッフ側の重要な仕事である。 是非、音楽を上手につかって、 「遺族にとっての心に残る葬儀」を演出して欲しいと願っている。
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投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2005年05月08日 10:16
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