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2005年10月20日
7月から病院スタッフとして ボランティアをさせて戴いている病院にはホスピスがある。 そのホスピスでは数年前から、患者様やご家族のサポートとして ボランティアスタッフが活動している。 私はずっと前からその患者様向けに、 私なりの音楽を使ったホスピタリティを伝えたいと思っていた。
イメージとしては以下のようなものだった。 その1、大げさではなく、さりげない「ライヴコンサート」 その2、何気なく病棟内に「生の音楽」が聞こえる空間づくり その3、患者様やご家族が、その場所に「来なくてもいいコンサート」 私はこれらをボランティア・コーディネーターの牧師様にご提案して、 その日を待っていた。 そして今日初めてそれを実現するために、ホスピス棟へ伺った。
初めて訪れたホスピスの談話室は、大きなガラス窓から たくさんの陽射しが入るとても居心地のいい部屋だった。 外の緑が鮮やかに目に入る。 ゆったりと座れるソファと、車椅子の方もゆっくりとお茶が飲める 低めのテーブルが置いてある。 私はその談話室でのお茶の時間に、 そこにある古いピアノを弾かせていただいた。 まず「ふるさと」から弾き始めた。 「真っ赤な秋」「里の秋」「もみじ」など、季節の歌から、 「椰子の実」「うみ」「夏の思い出」など日本の叙情歌、 昭和歌謡から最近の歌まで・・・。 「いとしのエリー」「遠くで汽笛を聞きながら」「卒業写真」 「この広い野原いっぱい」「芭蕉布」「海、我が愛」 「思い出の渚」「君といつまでも」・・・・・。 普段私達が口ずさむ、耳慣れた曲を選んだつもりだ。 あまりにぎやかにならないように、なるべくゆっくりのテンポで、 低めの音で・・・。 「別れ」とか「さよなら」「送る」という歌詞が 出て来ないものを探しながら、選曲には気をつかった。 予定の1時間はあっという間に過ぎて、 結局は1時間30分ほど続けて弾いていたことになる。
その間、病室から歩いて出られる方や車椅子の方が数名来てくださった。 又、患者様に付き添うご家族が、静かに耳を傾けてくださったり、 お風呂に向かう前の患者様がベッドのまま談話室に来て、 一緒に「もみじ」を歌ってくださったり・・・。 何よりもうれしかったのは、部屋を出られずに ベッドに横たわる患者さんも、談話室から聞こえる私のピアノに じっと耳を傾けてくれたらしいということ。 目をつむり、その歌の思い出に浸ってくださったのかも知れない。 「私の結婚式の時に歌っていただいた歌だわ」 と呟いていた患者様もいらしたとのこと。 付き添うお嬢さんが 「父の横で全部歌いました」とおっしゃってくれたこと。
音楽は、人それぞれにその時代の思い出があって、いくつになっても その曲を聞いた途端にその時代に帰ることができる。 私のつたない音楽が少しでも人生を振り返り、 その楽しかった思い出に浸る時間となってくださったら、 そしてある意味ではもう一人の患者様でもあるご家族に、 少しでも現実から意識を変えて、肩の力を抜くことが出来る 一つのきっかけになったらと私は願っていた。
今回私は、誰も談話室に来なくてもいい。 ひっそりと弾いて帰ろうと思っていた。 拍手なんか全然期待していなかった。 ところが最後の曲を弾き終わると拍手が聞こえた。 ナースセンターからもたくさんの看護師さんからの拍手・・・。 私までもが癒された瞬間だった。 今日、私の中のホスピタリティマインドは「音楽そのもの」だった。 ハートの中にあるこの暖かいものを「音」にして伝えようと一生懸命だった。 目の前にいる数人のお客様と、ホスピス棟内のベッドで聞いてくださっている 多くの方々のために、真っ直ぐに精一杯表現させていただいた。 次回は少し歌も歌おうと思っている。
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投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2005年10月20日 16:30
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