その山間に私の家はあった。
写真の異人館も海に面した所に一軒だけ、ポツリと、また、堂々と建っていた。
母が若かった頃には、人も住んでいたようだが、
私が知った頃には、もう誰も住んでいなかった。
移情閣と呼ばれる、(通称“六角堂”)この古い建物にかかる階段に一人座って、
空が暮れなずむまで、いつまでも目の前に広がる海をよく見ていた記憶がある。
何かで辛い時、また、真っ赤な夕日が余りにも大きく、
美しく、海面を染めていると、必ず此処に来た。
多感な少女時代に、あらゆる意味で私を支え、また、
芸術への霊感を与え続けてくれた、原点ともいえる景色である。
そして、淡路島を望むそこからは、夕方になると、
彼方で何十匹ものトビウオがキラキラと銀色に輝きながら、
アーチを描いて飛び跳ねるのが見えた。
電車の登下校の際や仕事の帰りなど、いつも、この海側に面した窓に、
張り付くようにして、この景色を見つめていたのを懐かしく思い出す。
そんな海も山もある美しい街で暮らしたせいか、
私は、一度も“どこかへ旅行したい”と感じたことがなかった。
それほど、私はこの神戸という街が大好きであった。
そして、20年前にはなかった明石大橋が堂々と吊られ、
今では観光名所のひとつになっている。
壮大だ。
観光で神戸へ行くなら、是非、この西の方まで足を延ばして頂きたい。
そして、“たこやき”ではなく是非とも“明石焼き”をご賞味頂きたい。
うまいですぞ。
安くてうまい店も沢山あります。
また革製品を買うなら絶対に神戸をお薦めします。