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2006年02月17日

葬儀司会<神葬祭>を終えて (井手 一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

今回の現場、K斎場は10年前までの主戦場・・・久し振りで懐かしい。
知った顔が随分と揃っていて、少し照れくさかった。
では通夜際・葬場祭・帰家祭・十日祭の司会レポートを。

改めて東京の式場は狭いと思う。
住宅事情と同様だ・・・だから、狭いうえに式場使用料は高いときたもんだ。
(死ぬ時は東京以外でね、と冗談で言っていた頃を思い出した)
今回、会葬礼状が1200と伺い、K斎場で大丈夫だろうかと心配した。
だって一番広い部屋でも椅子席が160席位しかとれませんからね。


 


この会場は、本来左右の式場が別々なのですが、
中央の間仕切りを取れば、このようにやや間口の広い式場に早代わり。
面白いのは、左右の式場はそれぞれ40万なのですが、
左右を合わせて一つの式場として借りると90万・・・
何で? 普通は安くならないか?
二つを合わせて高くなるところが・・・やや凄い。
でも利点もあるのです。
このK斎場には、マイクを使える式場がありません。
しかしこのように2部屋合わせて使えば、唯一マイク使用がOKになる。
ということで、司会者のニーズもあるわけです。
民間の斎場だから、骨壷の持ち込みも禁止(規定の品を買えば持ち込みもOK)
火葬料金も驚くほど高い・・・しかしこれが本来の火葬に掛かる金額かも。
行政の斎場・火葬場では、何割負担するかで金額が決まるだろうが、
民間の火葬場付き斎場(この表現は本当は変ですけど)では、全額負担だからね。
※斎場とは清浄な場所を意味しますので、本来火葬場とは対極を成す。

通夜祭は、そりゃごった返しました。
当たり前だよね、これだけの人数を捌ける部屋ではありませんから。
導線を確保するのに大変だしさ。
それでも、担当者やセレモニーレディは目一杯頑張っていました。
葬祭スタッフは、司会の私も含めて総勢10名だったでしょうか。
開式予定時刻を15分早めて対応したけれど、それでも無理・・・。
ホールの式場前スペースがゆったりと取ってあって、
しっかり暖房が効いているから何とかなりましたけど、
本当は椅子席に座らせてあげたいですね。
別に設けた記帳所では、同時に40人程が記帳できるスペースがあった。
記帳と受付は滞らないけど、やっぱ場内がね・・・狭いわ。


 


神葬祭は、神官と列席者が一体となるのが良いのです。
立ったり座ったり、斎主(祭主)に合わせて一拝(列拝)したり、低頭したり・・・。
列席者にも参加している意識が芽生え、ほどよい緊張感が維持できます。
神官の作法が雅で奥ゆかしいと更に良い。
通夜祭の消灯も宗教儀礼としての視覚効果があり場が引き締まります。

しかし残念なことに、神葬祭の司会を苦手とされる担当者は多い。
仏式と比べて施行比率が圧倒的に少ないからだ。(一部例外地域もあるが)
馴染みが薄いので、自分から進んで学ぼうとしなければマスターできない。
日々の業務の流れだけでは、忘れた頃にやってくる神道の司会となってしまう。
そこでFUNETでは、式次第に対応した神葬祭アナウンス文例や、
神葬祭打ち合わせリストを用意しているが、これは実際に私が使っているもの。
今回も「○○大人命(うしのみこと)・通夜祭 葬場祭 進行打ち合わせ」
と題した数ページに及ぶ進行表とチェック項目を5部ずつ用意し、(下記写真)
私と葬儀担当者と神官3名(計5名)とで開式前に綿密な打ち合わせを行った。
綿密と言っても時間にして5分、しかしたったの5分で充分。
お陰で通夜祭・葬場祭と何の滞りもなく進められた。
寧ろ、神葬祭の司会は楽しいくらいだ。



<アドバイスコーナー>
ではこの日の進行打ち合わせ台本から抜粋・・・項目は「修祓(祓詞奏上)」
①修祓は、祓詞奏上と修祓から成る。
②神官は祓詞を諳んじているので祝詞を取り出して読み上げることはない。
上記2点が分かっていれば、打ち合わせは以下のようになる。
まず祓詞奏上では、神職が起立されたら起立のアナウンス、「ご起立下さい。」
祓詞を奏上される祭にはご低頭のアナウンス、「軽く頭をお下げ下さい。」
元の席に戻ったら着席のアナウンス、「ご着席下さい。」
次に修祓では参列者のお祓いの時に、起立、低頭、着席をアナウンスする。
お祓いの順番は、ご遺体・祭壇・祭具類やお供え物、玉串案・奉仕員
(祭主そして祭員)とここまできたら、「ご参列の皆様ご起立ください。」
祭員が参列者に向いたら、「お祓い申し上げます、ご低頭ください。」
終われば、「お直りの上ご着席ください」・・・
と、一般的な流れはこうなるわけだ。
後は式場の形や神官の考え方次第で、例えば修祓の順序が、遺族・親族と
一般参列者は分けてお祓いするとか・・・これが打ち合わせ・確認なわけです。

またお参りの仕方について強制は出来ないが(信仰の自由)、情報提供は必要。
一般の方にも馴染みがない神道のお参り作法は、
お参りの仕方を案内板にして式場の入り口付近に立てかけてある。(下記の写真)
色んな現場で見かける例だが、一目で分かりやすい案内だ。


 


更に私の場合は、開式前のアナウンスの中でお参り作法について触れる。
ポイントは、拍手(かしわで)を打つ際に、音を立てないということ。
忍び手(しぬびて・しのびて)と言われるものだが、作法全体をアナウンスしても
到底憶えきれるものでもないからポイントを一つに絞って安心させるのだ。

この式場は、照明や音響設備も合わせた司会台が、
式場左後方に備え付けてあり動かせない。
不便で司会がやり辛い、私が一番嫌いなパターンである。
こういう商品を作る人間は、司会者の立場や葬儀の作法という観点から
物作りを考えたことがないのだろう・・・私には愚かとしか思えない。
(工場長がこんなもの作ったら即刻クビだ)
オペレーションを一箇所に集中しただけのことで、逆にクオリティを下げてる。
葬儀以外の司会席では滅多に見かけない代物だね。
今回も参列者が立つと、神官が見えなくなるのだ。
司式者(この場合神官)が死角になるセレモニーの司会席・・・考えられないよ。
そこで(いつものことだが)、マイクスタンド1本を持って、式場前方の
祭主(斎主)のやや対面・・・つまり前方左側に立ってやらせていただいた。
司会は、マイク一本あればいい、ごちゃごちゃ余計なものはいらない。

セレモニーにおいては、文化功労者が天皇から賜る弔意の飾り方。
弔辞や弔電の供える向きなど・・・色々と思うこともあったが、
事情もありここでは書きつくせない。
弔辞も一つは私が代読した。
また神葬祭についてはきりがないので、詳細はセミナーなど別の機会に。
ただ今回は帰家祭や十日祭の祭壇も撮ったので少しご紹介を。
東京の一般的な飾り方よりは、立派だと思う。
私は地方の神葬祭でとんでもないのを見たり聞いたりしているから、
東京の基本的なやり方はとても安心する。


 


地方の神葬祭での面白ニュースを少し。
祭壇に金魚鉢・・・もちろん金魚が泳いでいる。
(金魚は・・・川魚?・・・どうすんのこれ?)
玉串が足らず、洗米でお参り・・・神官が一粒ずつ渡してるよ。
(神官が可哀想になりました)
献灯があるのに、開式前にスタッフが蝋燭に火を灯しちゃった。
(げっ、仏式じゃないってのに)
火葬場に霊璽を持って行っちゃった。
(位牌じゃないよ、これ。)
※一部、持って行く地域もありますが一般には不浄な場所へは行きません
とりあえずこんな所で。

故人の幼少期は北海道のある地方。
そこで青年期までを過ごすことになるのだが、
生涯「揺籃の里」として自らの原風景を描いたようだ。
それが自身の曲作りにも大きく反映されているらしい。
独学で学ばれたという作曲法、数々の映画音楽、一筋の道が垣間見える。
参列者の中にファンの方も混じっていて、多くの悼む声が聞こえた。
きっと故人にも届いているだろう。

喪主様のお人柄には感心した。
弔電の発信人で苗字はともかく、下のお名前の読みが不明。
現実問題としてよくあることだが、彼の発言が見事。
何かあれば私が全責任をとりますから、一般的な読み方でやりましょう。
柔らかな物腰からは想像もつかない決断力。
でも、こういった一言で司会者はどれだけ救われることか。
故人ももちろん立派な方だが、息子さんも立派。
あれだけの方だから、取り巻きも多く色々とあるけど、
喪主様がしっかりしていたので安心して施行が出来たように思う。
心から感謝申し上げたい。


<井手の割り込み>
トイレの落書きベスト1・・・だと娘から聞きました。
個室に入ったらまず正面の壁に、
「右を見ろ」と書いてある。
右を見たら
「左を見ろ」
そこで左を見ると
「後ろを見ろ」
で、後ろを見ると
「キョロキョロするな ! 」
素晴らしい、面白い、センスいいね。

今日は、ある老舗ホテルでの「偲ぶ会」プレゼンを観に行ってきます。
石川が司会、私はFUNETシステムの中から思い出パネルや
追悼DVDを飾らせていただきました。(もちろん追悼文も)
考えてみれば、石川もFUNETで進行文言からナレーションまで作ってます。
頑張ってもらいましょう。
さて、参加される方々がどのように思われるか・・・心配ですな。
実は、ホテル関係者に現在の葬祭トレンドをご理解いただくのは意外と難関。
かつての葬祭のイメージが結構強いのかも知れません。
都内の有名なホテルのスタッフで、葬祭専門の学校に通って
根本的な所から勉強している人もいるそうですが、これは例外的な存在。
参加される方々には、是非前向きに取り組んで欲しいですね。
報告はまた後日・・・。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年02月17日 15:18

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