3年前になるだろうか、最初に作った20曲は実に悲しげな曲が多い。
思い返せば、これまでの私の人生の中で、
出会った人との別れをイメージして作った曲が多いからだ。
そして昨年作った10曲は、残された人へのメッセージを思い浮かべて作った。
今その曲を聞けば、やはり涙に暮れる悲しみのご家族を思い浮かべる。
そして今回は、葬送ナレーションBGMというコンセプトで、
ナレーションのバックに流れるに相応しい曲を作ったが、
それらを作りながら、尚且つ私の中にはある風景が常に存在していた。
それは昨年からピアノライヴの演奏で伺っている、ある病院の緩和病棟だ。
「ホスピス」に伺うのは初めてだった。
それまで私の中には、ホスピスとは、
「死を間近にした人や家族が、悲しみに暮れながらその日を待つ」
という暗いイメージがあった。
しかし、半年以上もそこに身を置くと、そのイメージは随分と払拭されている。
何と言えばいいのか・・・とにかく「前向き」なのだ。
皆が「生きることに積極的」という気がする。
もちろん「人の死」は悲しい。
そして死に立ち向かう患者様の本心は、到底計り知れない重さがある。
そのご家族も、先が見えない不安を抱えての日々は、
他人には想像しがたいものがあるだろう。
しかしそれだけではない何かが「ホスピス」にはある。
ここでは「人の死」は、ただ暗く悲しいだけのことでは無い。
ここでは「逝く人」をみんなが支え、その方が「生きたこと」を承認し、
残された今を「生きる」ことを精一杯支えている。
「よりよく生きて、よりよく死んで行くための、医学的・心理学的両面の
サポートをする」それが「ホスピス」なのだ。
ここは患者様もご家族も、そして私たちボランティアにとっても、
「生きる場所」以外の何ものでもない。
私は、わずかな期間ではあるが、その中に身を置かせて戴き、
多くの患者様やご家族の深い想いや息づかいを、肌や心で感じながら、
その日その時にふさわしい音楽を選び演奏をしてきた。
そして今回のBGMも、その現場の空気をそのまま曲にしたものが多い。
レコーディングをしながら、これまで天国に見送った患者様の面影や、
サポートしてきたご家族の、なぜか「晴れ晴れとした表情」が蘇える。
だから曲想も全体に明るめなものが多い。
人生の最期の時間を、このホスピスで、
たくさんの前向きな言葉や笑顔で過ごした、
多くの患者様に捧げるCDとも言えるだろう。
悲しみを見つめ、時としては一緒に涙を流しながら音楽活動をする中で、
本当に多くのことを教えてもらっている。
悲しみの果てのそれを越した所にある
「人間のたくましさ」「繊細さ」「明るさ」「強さ」「悲しみを乗り越える力」・・・。
私の音楽制作のテーマである「悲しみの心に、そっと寄り添う音楽」が、
ホスピスでの体験からさらに深く掘り下げられ、
今回のBGM音楽となって出来上がった。
発売は、綜合ユニコムさんから6月頃とのこと。
是非、聴いてください!
<井手の割り込み>
近日中にサンプルを数曲用意する予定です。
是非聞いてください。
お楽しみに…。