先日、ナレーションを大量レコーディングした。
収録時間は8時間、それはそれで疲れたが、
その後…その編集に3倍以上の時間が掛かっている。
そんなある日、久し振りに午前様で帰宅すると我が家は寝静まっていた。
そして、ジャーン!
しっかりと私の夕食の用意が。
晩飯を食う暇もなかったので、ありがたい。
こんな時だけは家内に感謝の気持ちが湧いてくる。
では地道な編集作業について。
収録は音声トラックと音楽トラックに分離しているのだが、
収録中は双方をシンクロで流しているから同時録音のように思えるだろう。
しかも橘にはヘッドフォンで音楽が聞こえているので、
ナレーターにしてみれば葬儀の現場と全く同じ条件である。
しかし、実際には別トラックにそれぞれ独立して収録しているのだ。
そして一旦収録したものは、全てデジタル処理が可能なので、
ここからの作業は、凝れば凝るほどきりがない。
やろうと思えば何でも出来るからね。
音声の位置をずらせば、音楽に対して喋り始めた箇所がいとも簡単に変えられるし、
ある原稿の「~に」の「に」の声のニュアンスが気に入らなければ、
他の原稿の「~に」の「に」の声をコピーして入れ替えることも。
語尾の「た」の音が跳ねていれば、他の原稿の「た」とすり替えたり。
やり過ぎると人工的になるので、その辺の按配も難しい、
何度も確認しながらの作業が延々と続く。
ただある程度は除かなければならない無駄な音がある。
それは、紙の刷れる音(これは原稿の音です)、衣擦れの音(橘の洋服)、
原因不明の音、リップノイズ(誰にでもある)、タンノイズ(誰にでもある)…。
橘は、タンノイズが割りと明瞭に出るタイプのナレーターである。
これは滑舌の切れ味が良いほど、マイクが拾ってしまうものなのだろうか。
手作業で一つ一つ波形を確認しながら消していく。
が、延々と続く作業の中で、ふと思い付き、橘のタンノイズの周波を探した。
2.1kHz~2.2kHz。
かなり高い音が出ていた、目立つはずだ。
となれば、エコライザーでその周波を消すしかない。
もう一度音声トラックのみを引っ張り出して作業のやり直し。
双方のトラックに同時にエコライザーを掛けると音楽が消えちゃうからね。
しかも、かなり大胆に処理するので、他の音声に影響がないかも気になる。
どうやらうまくいった。
いつもお世話になっているH氏のお陰だ。
こうして1枚目のCD48トラックをアラで編集。
音声トラックと音楽トラックを重ねて一本の元データが出来上がる。
もう一度確認して、気に入らないところはリミッター処理をしたり、
コンプレッサー処理をしたりして、漸く完成に近づいた感じ。
今度はそれぞれのトラックのナレーションの終わりに、
10秒で音楽がフェイド・アウトするように仕込む。
こうして48トラックをオンタイムで確認した後、
それぞれのトラックの頭にPQコード(信号)を打ち込む。
曲間は2秒、これがCDの一つ一つを認識する信号なのだ。
たった一つの間違いも許されない。
後はCDに落として、仕上がりのチェック。
当然オンタイムで聴かなければならない、それも集中して。
今回、気に入らないところがあったので、もう一度やり直した。(ガクッ)
こうしてやっと1枚目のCDが完成した。
でも…もう一枚あるのだ。
35トラック。寝る暇、ありまっしぇーん。
おまけに今日は、別件のレコーディングがある。
FUNET会員向けの司会音声ライブラリのためのものだ。
常時100トラック程度アップしてあるけど、会員の評判はすこぶる良い。
24時間いつでも聞ける音声トレーニングは効果も絶大。
半年程度でかなり上達した人が続出しているらしい。
そりぁそうだろう、聴き続けていると勘所がわかってくるもの。
司会実技は、良い司会をたくさん耳で聴いて学ぶのが正解、理屈ではない。
さて今回は、会員のレベルも上がってきたので、10分程度の長文を収録するつもりだ。
楽しみに待っていてください。
因みに10分もの長文は弊社ホームページのウェブ上にはアップできません。
読み込むのに時間が掛かりすぎるでしょう。
短いものは検討して、近々サンプルをアップするようにします。
では、レコーディングに行ってきます。