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2006年05月28日

親戚の葬儀で…<その1> (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

<22時>
叔母さんが危篤という電話は夜の10時過ぎだった。
「今夜が山かもしれない」
とりあえず、身近な親戚にも連絡をする。

<6時>
夜中に亡くなったとの知らせ。
叔父と子供たち家族で見送ったそうだ。
そうか…それがせめてもの救いだろう。
叔母は70歳…まだ若い。
少し早すぎたかな、一番上の孫でさえ小学校に上がってない。
残念だ。

<7時>
叔父から電話。
近所に住む親戚は、皆ある団体に所属している。
我が家も、もちろん同じだ。
家内が岳父の遺産を相続してから、必然的にそうなっただけだが。
「井手くん、葬儀は○○に頼もうと思うけど」
どうやら叔父は私に気を使っているらしい。
確かに我が家の倉庫には、祭壇からテントから棺から骨壷まで…
葬儀社と変わらない程度に揃っている。
岳父の葬儀も私が自分で出したことを叔父は知っている。
「叔父さん、いいじゃないですか○○で 私も良く知ってますから」

実は私は5年程以前、この団体の葬祭部がISO取得の際、
葬儀専門技術者として審査のお手伝いをしたことがあった。
当時としてはかなり早い取り組みだったと思う。
それに我が社は葬儀社ではないし、
身内の葬儀を自分たちで好きなようにやっているだけだ。

<9時>
再び叔父からの電話。
「ちょっと困ってるんだ、よく分からないから同席してくれないか」
何事かと聞いてみると、どうも依頼したはずの○○ではなく、
別の業者が見積もりに来たらしい。
車で10分もあれば行ける距離だが、家内は早くから叔父の家で手伝っている。
留守番役の私は、何せ預かっている子供もいるので直ぐには出られない。
家内の妹に子守りを頼み、彼女が我が家に到着するのを待って家を出た。

<9時30分>
叔父の家に到着。
叔母の亡骸に手を合わせてから、打ち合わせの部屋へ入った。
担当者と挨拶を済ませ名刺交換。
…なるほど、確かに葬儀を依頼した○○ではない。
「○○さんじゃないですよね」と問うた。
担当者は、私が登場したときから<余計な奴が来たな>という感じが露骨。
まあ、気持ちは分からなくも無い。
見積もりの最中に、遺族が助けを呼べば、誰だっていい気はしないだろう。
「後で来ます」と、ぶっきらぼうに答える担当者。
(ん…感じが悪いなあ)という印象。

しかし…とうとう最後まで○○の人間は来なかった。
ウソや誤魔化しはいけない、絶対に。
この時点で、印象が最悪となる。

話を時系列に戻そう。
名刺の何処にも○○の文字はないし、それどころか××葬祭としっかり自社のものだ。
これなら、リピートは全部とはいわなくても、かなりは持っていかれるだろう。
見積もりは、若い担当者がやりにくいだろうと、なるべく口出しは控えた。
叔父がどう判断してよいか迷っている時と、この若い担当者の説明が偏っていたり、
不足して意味がしっかり伝わっていないと判断した場合のみ口を挟んだ。(つもり)

でも、ちよっと酷い。
見積もり業務も、はっきり言って下手。
本人は5年近く葬儀社にいるので一人前のつもりみたいだが、及第点には至らない。
事務的な見積もりの仕方も良くないけど、手抜きもかなりあった。

叔母が安置されていた部屋には神棚があるのに、半紙で神封じもしていない。
もし知らないのだとしたら、知識不足で立派に落第だ。
そういえば、彼の名刺には、厚生労働省認定葬祭ディレクターの肩書きはない。
結局、遺族で穢れているけど私が半紙を貼った。
(何のための葬儀社だよっ)

叔父はあるセットの祭壇一式を発注したのだが、
彼はしきりに湯灌のオプションを薦める。
価格は五万円だという。
「えーっ、えらく安いなあ」
その中味を聞いて気絶しそうになった。
タオルで専門家が拭くだけというのだ。
私が本来の湯灌の金額を伺ったら
「それは、ずーと高くなります」
「いくらですか?」
「え、もうずーとお高いですから」
「だから、お幾らですか」
「・・・」
金額は言いたくないらしい。
あるいは、知らないか、それともそんなオプションは用意もしていないのか。

<10時30分>
叔父はずーと風呂に入っていない故人を湯灌したいと言う。
結局、すったもんだのあげく、湯灌は私が手配することにした。
すると、担当者は困った顔をして、納棺まで私に頼みたいという。
しかもドライだけは自分たちのものを使ってくれないかと。
何のことはない、湯灌と納棺を外注して業務を減らしたいのが見え見え。
(馬鹿かこいつは)
ついでだから、そのまま棺も引き取ってもらった。
(どうせ値段は引かないだろうけど、セットだからさ)
あんな安っぽいお棺(悪いので品番は伏せますが、PKの一つ上だ) 

私が業者だったら、彼の三倍以上は軽く見積もるだろう。
相続税の控除を使わない手は無い。
叔父のお宅は、10年以上前の不幸の際に、○億の相続税が掛かっている。
しかし、こんな担当者に家や敷地やその他の情報を見抜く力があるはずない。

この頃になると、私がどうやら同業者かもしれないと気づいたようで、
おまけに湯灌や納棺も自分たちはやらなくて済むからと、
私に対する態度が180度変わった。
360度変わるんだったら面白いけど、これはいただけない。
自分が一番の専門家のように思っていたら恥を掻くよ。
家内も叔父も止めるから怒らなかったけど、この担当者レベルならクビものだね。

御用聞きのような見積もりしやがって。
しかも、湯灌や納棺は業者に振りたくて仕方ないのだ。
玄関に貼る忌中紙や日程表だって、泥棒が入りますから貼りませんときたもんだ。
そのくせ、礼状には個人情報を平気で掲載。

<11時>
「後でまた来ますと、逃げるように帰っていった」

まあ今日は「その1」だから、このへんで。
その2は、セレモニー編だぜ。


<割り込み>
久し振りに少し時間が取れてエッセイをアップできました。
葬祭ディレクター受験対策の資料作りも、最初の峠を越えたところです。
これでぼちぼちエッセイが書けると思います。
研修報告もしなければなりませんし…。
バテぎみです、完全に。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年05月28日 00:00

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