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2006年06月15日

縹縷 (はなだのる) (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

今では滅多にお目にかかれなくなった葬列の風習。
しかし地方へ行けば、葬列が完全消滅しているわけではない。
所によっては講などのコミュニティが存在し、相互扶助の名残がある。
少し離れた場所に霊柩車を停めて、短い距離で形だけの葬列をするようだ。

さて、葬列の道具ではないけれど棺の前後に晒し布(白布)を結んで、
前から引いたり、後ろからゾロゾロと繋がったり、その形態はまちまち。
私は耳から聞いて憶えたので「縁綱」(えんのつな)と思っていた。

ところが最近読んだ書物で、野辺の送りの綱は、
「前綱」「先綱」と「押綱」「後綱」と書いてあり、自分の間違いに気づいた。
しかし、これでは<えんのつな>と間違えそうな発音ではない。
それとも「前綱」を<ぜんのつな>とでも読んでいたのだろうか、
それなら「後綱」は<ごのつな>と読まなければなるまい。

福島県の相馬地方の神道の司会に呼んでいただいたのが10年以上前か。
その時、実物を目の当たりにし、耳で聞いて憶えたので、
相手の発音が訛っていたということにしておこう。(福島の人ごめんね)
ただ、当時文献で調べた際にも「仏との結縁の印」とあったような記憶がある。
だから、「縁」で間違いないのだろうと勝手に思い込んでいたようだ。

どうやらこの綱のことを、一般的には「善の綱」(ぜんのつな)と言うらしい。
これだ、きっと私が聞き間違えたのは。(倒置法で強調しています)
私が不勉強でモノ知らずなばかりに、
危うく福島の人の発音が訛っている事を証明するところでした。
おー、あぶない、あぶない。(このレトリックは、アンガールズ風です)

綱を持つ位置は、一般に忌を受ける度合いが強い人ほど死者に近い。
つまり、血縁関係が浮き彫りになる。
よって、東京で使うような「喪主リボン」なんて野暮なものはない。
それ以前に、同じ地域の方は、まあお互いよくご存知だしね。

…晒しの白布が日常生活で多用された時代。
晒し布は、それなりに貴重な反物であった。
葬列の善綱を、金持ちは、「道の手」とも言ったらしい。
そして葬儀後、善綱の白布は寺や手伝いの者に喜捨したとか。
逆に言えば、貧乏人の葬儀では「道の手」はなかったと。
それだけの余裕がないということ。
…嫌な話です。
私は、こういう差別が大嫌い。

私が善綱の根源ではないかと思っているのは、東大寺の大仏建立の話だ。
聖武天皇が仏教興隆のために、大仏を建立する。
携わった人の数は延べ260万人と言われ、当時の日本の人口の約半分だとか。
幾多の困難を乗り越え、漸く大仏が完成する。(行基も偉い)
その開眼供養の日…
<縹縷 (はなだのる)>と呼ばれるひも状のものが、
大仏に魂を入れる導師の手元から延々と伸びて…聖武天皇はもとより、
人々はその<縹縷 (はなだのる)>に掴まり、大仏との結縁を望んだ。
この時の<縹縷 (はなだのる)>は、今も正倉院に保存されている。

<縹縷 (はなだのる)>の縹(はなだ)とは、
平安の昔から、庶民が普段着として着た「着物」の代表的な色が縹(はなだ)色。
藍染の中でも「紺色」の一つ手前の色。
縷(る)とは細い糸、糸すじのこと。

<縹縷 (はなだのる)>…ネーミングがとても素敵だと思います。

金持ち、貧乏関係なく、
特に大仏建立には庶民のパワーが活かされていますし、
全ての人々が、仏との結縁を望んだというこの<縹縷 (はなだのる)>。
私はここに「善綱」の風習の根源があると勝手に認定しました。

誠に勝手、本日以上。


<おまけ1>
ツバメのその後。


我が家の玄関で育っているツバメが間もなく巣立ちのようです。
巣箱から出で、平気で私たちから餌をもらいます。

こんなになつくとかわいくて、仕方ありません。
当分、焼き鳥が食べれませんね。

<おまけ2>
昨日は、恒例のレコーディング。
橘も収録したけど、久し振りに私も収録しました。
シンポジウムの講座で、有意義に活用する予定です。
少しばかり、サプライズを考えています。
詳細は、工場長から報告があるでしょう。

今日から、葬儀司会研修で大阪へ行ってきまんねん。(大阪)
橘も、石川も、社葬の司会が入っとるばってん(長崎)
つづないけんど(高知)、何せ大阪出張じゃん(神奈川)、
私はフォローでけへんどす(京都) けっぱれー!(青森) 
・・・ほな。(最後はやっぱり大阪で)

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年06月15日 00:09

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