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2006年08月15日

葬祭へぇ~ その6 (工場長)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

葬祭ディレクター技能審査。
その設問を見ていると「へぇ~」と思わせるものも多い。
葬儀において「なんでだろう?」と思っていたことも、
葬祭ディレクターの問題として取り上げられていることもある。
(現場離れしていない問題は、良問!)

そんなわけで、葬祭ディレクター技能審査の設問において、
ちょっと気にかかった「葬祭へぇ~」をゆるい感じで紹介していきたい。
(実際の設問とは全く切り離してエッセイを書いております。
 その点、ご注意下さい。あくまで、工場長の「へぇ」です。)

今回は、その6。「喪主」に関すること。

2級の実技筆記に、
「遺族の代表者を【喪主】と言ったり【施主】と言ったりしますが、
 どちらが正しいのですか。【喪主】と【施主】に違いはありますか。」
というような問題があります。

【喪主】という言葉は、一般の人も知っているでしょう。
【施主】は、社葬でも経験しない限り、なかなか出会わない言葉ですね。
(私もそうでした。)

私の理解では、喪主と施主は、
【喪主】・・・遺族の代表
【施主】・・・お金を支払う人
という単純な区別でした。

個人葬の場合は喪主と施主は同じ人がすることが多く、
その場合、葬儀に於いては【喪主】として表示されることが多いので、
一般の人には喪主という言葉は知っているのかなと思います。

でも、どうやら葬祭ディレクターは、
その表面的な知識だけでは駄目なようです。(やっぱり)

セミナーテキストの解説から一部引用すると、
「【喪主】は、祭祀を執り行う者、または祭祀権の承継者のこと」という定義だそうです。
祭祀権…難しい言葉が出てきました。
が、それを知ってこそ葬祭ディレクターなのでしょう。

調べてみると、祭祀権とは、「仏壇・位牌・神棚・社祠・墳墓などを管理し,
年忌・法事などを含む祖先の祭祀を営むべき責任と権限」のことだそうです。
だから、祭祀権の所有者(継承者)が喪主、というのは当然ですね。
ちなみにこの祭祀権は、遺言相続によって、
故人が継承者を決めることも出来るそうです。
(ちなみに、相続には遺言相続と法定相続があります)

喪主に長男が多いのは、
戦前、明治民法下で嫡長男子本位に規定していたことの影響があるそうです。
また明治民法では、代表権、財産権、監督権、なども嫡子長男本位でした。
いわゆる一子相続(相続者が一人)というのが通例です。
現代の個人葬において喪主=施主という認識が多いのも、
祭祠権と財産権が一人に継承される戦前の時代の影響が大きいかったのだと思います。

それが戦後の法改革で祭祠権と財産権は完全に分離され、
財産は法の下で直系親族や兄弟に分与されることになり、
【喪主】と【施主】も分けて考えられるようになり始めたのでしょう。
喪主であっても、相続を多く受けられる立場でない場合もありますからね。

また、祭祀権の相続(仏壇やお墓など)は非課税というのも、
喪主が財産相続面で不利にならない計らいかと思います。
非課税財産や相続の問題は、1級の問題でも数多く問われていますね。

こうやって調べてみると、非課税財産や相続など周辺問題も含め、
「祭祀権」が一つの要になっているのかなと思います。
現場で祭祀権という言葉を使うことは稀でしょうが、
言葉の裏にある本質として、葬祭ディレクターが認識しておくと、
説得力が違うのかもしれませんね。

と、ここまで書いてきて、葬祭Dとは全く関係ないですが、
一つ疑問が生まれてきました。
それは、靖国神社の合祀問題。

靖国神社には多くの戦犯が祭られていますが、
彼らの「祭祀権」はどこに行ったのでしょうかね。

戦前、そして、今も、
天皇の神社、もしくは、国家の神社として君臨してきた靖国神社。
戦没者を英雄として(おそらく遺族の了承無く)合祀している訳だから、
やはり「祭祀権」は国(もしくは天皇)に継承されたということなのでしょうか。

どうなのでしょうね、これは。
先日ニュースでやっていましたが、
合祀から外れることを希望している遺族もいるようです。
そのような遺族がいる以上、合祀自体に違法の可能性を問うべきかもしれません。

「戦争という悲劇を二度と起こさないための誓い」として、
首相は今年も参拝する可能性が高いようですが、
果たして、そのような象徴として、まるで天皇のような扱いで合祀されていることを、
戦中に亡くなった故人は望んでいるのでしょうか。

一人ひとり、それぞれの想いで亡くなっていったでしょう。
国のために闘ったことは確か。でも、それだけではない。
一人ひとりの、もっと人間らしい点にスポットが当たらず、
勝手な戦中の英雄というイメージばかりが先行する合祀という行為は、
ある種の褒め殺しというか、彼らの尊厳を踏みにじっている気さえします。

そんなわけで、中国やら韓国やらは別として、
改めて「靖国問題」は考えものだなと思いました。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年08月15日 00:10

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