今日のライヴには内科病棟に入院なさっている女性の方がわざわざ来てくれていた。
すでにご自身の病状はご存知で、近い内にホスピスに転院していらっしゃるとのこと。
ここは教会がある病院なので、クリスチャンの方も多い。
この方も、すぐに讃美歌のリクエストをくださった。
511番…その方の愛唱歌とのこと。
私には初めての讃美歌だったが、美しいメロディーがとても気にいった。
私は実家が浄土真宗、嫁ぎ先は真言宗だったので、
多分、最期は仏教葬で送られるのだろう。
でも、その内密かに洗礼を受けているかも知れない。
キリスト教のお葬式が私は好きだ。
私は讃美歌をよく知らない。
でも弾いて欲しいとリクエストを戴くことが多い。
初見でいつも一生懸命に弾いて差し上げる。
これがこの方と音楽を共にする最期かも知れない。
今のこの瞬間を大切に、最大限の心を込める。
4番まで弾く内に、慣れて行き私も歌う。
その方はこの讃美歌を歌いながら、たくさん、涙なさっていた。
その中にご自分の運命をしっかりと受け止めていらっしゃる潔さを感じた。
そして涙しながら、気持ちの整理をしていらっしゃるように見受けられる。
それは、ご本人にとってのグリーフワーク。
亡くなる前にご本人自身が苦しみながらも悲しみを越していく、
なかなか越せるものでは無いと思うが、「人の死に方」として、
「世の中には、最後まで自分の運命を怨んで逝く人もいる」ということを考えると、
運命のすべてを受け入れて旅立つ逝き方が出来たら、本当に素晴らしいと思う。
ご本人はもちろんのこと、周りのご家族も、
どんなに心安らかに見送ることが出来るだろうか…。
そういう逝き方が、ホスピスでは可能なのだ。
医学生とのミニコンサートは、ピアノの時間の最後に行なわれた。
その学生はギターを抱えて緊張気味に出てくると、ゆっくり弾き語りを始めた。
「翼をください」「若者たち」つかえるところもあったが、
さすが動じることなく演奏して行く。
私はこのライヴな感覚がたまらなく好きだ。
最期まで、QOL(生きることの質を高める)を目指すこの場所は、
すべての患者様の「今を生きる」為のサポートをする。
そしてそれはサポートする私たちの生きる質を高めることにも通じる。
私はそれを、音楽をつかってプレゼントしたいと思っている。
ライヴの最後は、私のピアノとデュオで「アメージンググレイス」だった。
私は医学生の声を暖かく包むようにピアノを弾いた。
一人だけのお客様に、心を込めてお届けした「ミニコンサート」だった。