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2006年10月26日

ホスピス・ピアノライブ (加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

ホスピスでのボランティア活動が、前回のピアノライブで1年目を迎えた。
出来る限り週に1度は伺うようにしているので、
ひとつひとつを思い出すことは出来ないが、その中でも印象が強いライブがある。

よく覚えているのは、戴いたリクエストと共に、
患者様やご家族とじっくりとお話をした時の思い出だ。
特にリクエストは、今でもその曲を弾くと、
それを聞きたいとおっしゃった方のお名前やお顔が浮かぶ。

1年前に弾き始めたのが秋だったため、
最初のリクエストは「真っ赤な秋」「里の秋」「もみじ」など秋の歌だった。
そして「椰子の実」「うみ」「夏の思い出」など日本の叙情歌も多かった。
中には「いとしのエリー」「遠くで汽笛を聞きながら」「卒業写真」
「この広い野原いっぱい」「芭蕉布」「海、我が愛」「思い出の渚」
「君といつまでも」など患者様の思い出の歌も多い。

枯葉が舞う季節になると、宝塚が大好きな患者様からシャンソンのリクエスト。
私は知っている限りのシャンソンを弾いた。
「人の気も知らないで」「ケ・サラ」「枯葉」「サントワマミー」「すみれの花咲く頃」・・・。
時々は私も歌いながら、ボランティアスタッフとハモリながら弾いた。

その時期に流行っている歌もリクエストが多かったし、
私と同じ年齢の方とは、フォークソングやユーミンなどを一緒に歌った。
仏文学を専攻していた男性からは「男と女」「第3の男」「シェルブールの雨傘」・・・
仏映画の音楽をとリクエストがあった。
ビートルズ世代の方とは「ミッシェル」「イエスタデイ」「ヘイ・ジュード」などを、
ビートルズ後期のアルバムから共に楽しんだ。
長崎のご当地ソングシリーズ
(長崎は今日も雨だった、長崎の鐘、長崎の夜はむらさき・・・)や、
クールファイブ、五木ひろし・・・などの男性ムード歌謡もリクエスト戴いた。
これはほんの一握り、まだまだある・・・。
色分けしたジャンル別のファイルは、7冊にもなった。
コピーをしただけでファイリングしていない楽譜も50曲以上ある。
そして、その1曲1曲が、その方々との思い出だ。

今リクエストを戴いているのが、
バドパウエルのピアノの名曲「クレオパトラ・ドリーム」というJAZZ。
私はリクエストをもらうとすぐに楽譜探しに入る。
我が家には楽譜が山程ある。
30年余りになる音楽の仕事で手にした楽譜は、
クラシックからオペラ、ミュージカル、ポピュラー、ジャズ…全部とってある。
どんな楽譜でも、捨てるなんてことは絶対に出来ない。

でもリクエスト戴いた中には、手元に無い楽譜も当然のごとくある。
すると友人に声をかけたり、インターネットで探す。
今の時代、インターネットから検索して、
楽譜をプリントアウトまで出来るようになった。
スゴイことだ!
そして夫の友人が探してくれて、
やっとこの「クレオパトラ・ドリーム」の楽譜が手元に届いた。

早速練習をする。
JAZZの歌は歌ってきたが、ピアノ演奏には慣れていない。
少しドキドキしながらのライブだった。
リクエストくださった患者様には、
「遅くなってゴメンナサイ」とお返事をして精一杯弾いた。
その患者様は、その日、あまり具合がよく無いようだったが、
多分ベッドの中で聞いて下さったと思う。
その方からはもうひとつ、「アランフェス協奏曲」のリクエスト戴いている。
頑張って練習しよう。
人それぞれに、生きた中での好きな音楽との接点がある。
その音楽の種類は、本当に人、様々だ。
患者様やご家族は、思い出の曲を聴きながら
「その生きた時間や、共有した人生に思いを馳せる・・・」

その一瞬のお手伝いが出来ればという一途な想いだけで、ここまでやって来た。
そして、2年目のピアノライブが始まった。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年10月26日 00:03

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