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2006年11月13日

浄土真宗の司会について

カテゴリー : 質問コーナー

はじめまして。
葬儀の司会を始めて間もないひよっこです。
疑問だらけなので、お答えいただけると大変助かります。

1.浄土真宗ぶっこうじ派について
  ぶっこうじ派の漢字は仏光寺と沸光寺と、どちらが正しいのですか? 
  それとも違う2派なのでしょうか?
  焼香回数は何回?
  資料を見ても浄土真宗は、大谷派と本願寺派しか載っていません。
  ぶっこうじ派は少数、もしくは特殊なのですか?
  ぶっこうじ派の資料がないため、焼香回数以外にも特色があるようなら
  知りたいのですが。

2.浄土真宗は「旅立つ」という言葉を使わないと、研修時に習いました。
  でも、大谷派の原稿で「今お浄土へと旅立たれます」の文があり、?
  また、大谷派は浄土真宗でなく真宗だとも教わりました。
  そのへんの違いを教えてくださいませんか?

3.先輩司会者が「導師、ご中座いたされます」
  「導師、ご拝読いたされます」と言います。
  「いたす」は謙譲語で相手に使う言葉でないはず。
   念のためと思い、広辞苑で調べたら謙譲語はもちろん。
   これに相当する使い方なのかと思う箇所を以下に転載します。
   ⑤「する」を丁寧にまた荘重にいう語。
   改まった場面で用いる。
   「清見原の天皇・・・ほどなく天下泰平をー・さる」

ご見解の程、よろしくお願い致します。
尚、このサイトを見つけ頼もしく思っています。
これからも都度、質問させていただくかもしれません。

回答
ご質問、ありがとうございます。
では質問の順番に答えさせていただきます。

「ぶっこうじ派の漢字は仏光寺と沸光寺とどちらが正しいのですか? 
それとも違う2派なのでしょうか?」

正式表記は「真宗佛光寺派」です。
佛光寺の寺号(名前)の由来ですけど、
寺伝によると興正寺(後の佛光寺)の阿弥陀如来の木像が盗難に遭い困っていたところ、
それが後醍醐天皇の夢に出てきて…東南の方角から一筋の光が差し込む夢…
探してみると、その通りに仏像が発見されたということによります。

「焼香回数は何回?」

焼香回数は原則2回ということでよろしいでしょう。
というのも、例えば浄土真宗本願寺派なら1回焼香と答えるレベルでの話です。
本願寺の僧侶は、お勤めの中で衣に塗香(ずこう)したり(密教のように)、
あるいは導師の作法の中では2回焼香のシーンも存在しますから。

資料を見ても浄土真宗は、大谷派と本願寺派しか載っていません。
ぶっこうじ派は少数、もしくは特殊なのですか?ぶっこうじ派の資料がないため、
焼香回数以外にも特色があるようなら知りたいのですが。

少し回答がズレますけど、ご理解ください。
真宗は、十派という分類が一般的でしょう。(もっと多い分類方法も存在します)
真宗諸派の成立過程は省きますが、宗祖の子孫によってうち立てられた教団と、
宗祖の門弟によって形成された教団に大別することが出来ると思います。
真宗十派の内訳は、本願寺派(西本願寺)・大谷派(東本願寺)、
高田派(専修寺)・佛光寺派(佛光寺)・興正派(興正寺)・木辺派(錦織寺)、
出雲路派(毫摂寺)・誠照寺派(誠照寺)・三門徒派(専照寺)・山元派(證誠寺)
で、真宗教団連合を組織しています。

「浄土真宗は、旅立つ…という言葉を使わないと、研修時に習いました。」

旅立つという言葉は、宗教上では誤解を生むので使わないようにしています。
(日常会話では問題ないですよ)
浄土真宗は旅立たない・旅をしないから使ってはいけない禁句なんだ、
と単純に言う人が多いですが、本当の意味をご存知の方は少ないようです。
少し説明をしましょう。
浄土へ往生する観念が、旅を否定しているから使えないというよりも、
往相(おうそう)・還相(げんそう)回向の考え方から否定させてもらっています。
往相還相回向については難しいので簡単に言いますと(語弊があるかもしれません)、
無くなった瞬間に浄土へワープすることが出来て、
(横超…横様に飛越える、と書いてあるけどね)
次の瞬間には、いつでも衆生を導くためにこの世(仮の世)に戻ってくるのです。
ついでに言うと、「忌中」が貼れないから、「還浄」(げんじょう)と書かれた紙を貼る…
このように僧侶が指導した時期もありましたが、
本願寺派ではこれを誤りと判断しました(2001年)。
何故なら「還浄」は「忌中」に比べたら遥かに正しいけれど、
上記の理由から往相回向のみを意味するので、
テストに例えれば半分の50点ということでしょうかねえ。
それから「回向」の意味が真宗では全く違います。
通常、真宗系以外の他の宗派は、
功徳を故人に回して差し向けるから「回向」と言いますが、
真宗の「回向」は、阿弥陀如来から等しくいただくものです。
これについては法要後の飲食で、
「献杯」という言葉が問題視されるのが該当します。

「大谷派の原稿で「今お浄土へと旅立たれます」の文があり、?」

これは誤りではないかと思いますが、
宗教上の文言に捉われずに司会言葉を選択する、という観点からなら理解できます。
しかし、本願寺派では使ってないということなら、ただの間違いでしょう。

「大谷派は浄土真宗でなく真宗だとも教わりました。
そのへんの違いを教えてくださいませんか?」

「真宗」と「浄土真宗」の表記の違いについてはあまり知られてないので紹介します。
(ちょっと長くなりますがお付き合いを)
七高僧をご存知でしょうか?
インドから中国・日本と続く他力念仏の系譜を、親鸞聖人が選択したものですが、
竜樹・天親…ここまでインド、曇鸞・道綽・善導…ここまで中国、
源信(恵心僧都)・源空(法然)…これは日本代表、の七人のことで、
親鸞聖人は最後の法然の教えを真実の宗教という意味で「真宗」と呼んでいました。
ところが法然没後に、様々な解釈の違いから批判を浴び浄土宗離脱のような形になり、
浄土真宗と名乗れば良いのですが、それでは浄土宗批判と受け取られかねません。
そこで「真宗」とだけ名乗ったようです。
ただ当時は、浄土宗や時宗でも「浄土真宗」と称した例もあるので、
今で言う浄土真宗とはかなり趣が違うようですね。
江戸時代に入ると、徳川家菩提寺の一つである増上寺等…を中心とする、
浄土宗からの圧力で浄土真宗と名乗る事を幕府からは許可されず、一向宗と称しました。
浄土真宗の表記は明治以降も認められず、戦後になって漸く認められます。
派名を正式に「浄土真宗本願寺派」と称するのは、昭和21年以降のことです。
(意外と歴史は浅いのです)
しかし元を質せば、明治維新の宗教再編時に、宗教団体として公的登録を行う際、
浄土真宗本願寺派のみが「浄土真宗」として申請していまして、
他は「真宗」と申請していたことが現在の名称に大きく影響しています。

先輩司会者が「導師、ご中座いたされます」
  「導師、ご拝読いたされます」と言います。
  「いたす」は謙譲語で相手に使う言葉でないはず。
   念のためと思い、広辞苑で調べたら謙譲語はもちろん。
   これに相当する使い方なのかと思う箇所を以下に転載します。
   「する」を丁寧にまた荘重にいう語。改まった場面で用いる。
   「清見原の天皇・・・ほどなく天下泰平をー・さる」

困りましたね、敬語については、あまり深く考えたくありません。(ごめん)
というのも、学問としての敬語は学説がたくさん存在し、
国語学者によって見解が分かれることも多く突き詰めたくないのです。
ご質問にある「拝読」という言葉も「読む」の謙譲語ですが、
相対的な使い方なら「ご拝読」はちょっと違和感を感じるけど、
絶対敬語のような使い方なら「ご拝読」も存在するかもしれません。
つまり、何を、どの立場の、誰が、読むのかで違ってくるはず。
同様に「いたす」もご指摘の通り「する」を丁寧にまた荘重にいう語…だと思われますが、
あまりに不自然と感じるなら他の言葉に変更されたらいかがですか。
私個人としては、時代がかった言い回しに聞こえますので、
分かりやすい現代風の言葉に変えると思います。

ではこの辺で…
参考にしていただけたら幸いです。
ありがとうございました。
井手一男

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年11月13日 00:18

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