会社に到着するや否や、すぐに社長室に呼ばれた。
賞状やトロフィー、社員旅行の時の写真がある。
事前に「例えば、こんなものを」とお願いしていたものだ。
スキャンする時間も無いので、
デジタルカメラに収めて、映像に活用することにする。
性能の良いカメラを持ってきておいてよかった。
それにしても、社長、ちょっと上機嫌だ。
誰もが良い社葬になることを望んでいるが、
葬儀委員長でもある社長が、やはり一番そう望んでいるのかもしれない。
一通り写真を撮ったところで、社長に伝える。
「18時までに叩きを作りますので、お時間があれば確認してください。」
18時。
ようやく修正したDVDが完成。
が、さっきまで式場に居た社長が、帰ったと言う。
Mさんに確認すると、
「映像は、任せるって言われた。明日の10時頃に確認するからって。」
「えっ…(もちろん、工場長の声)」
…まったく。
式場では社葬の準備に追われていたが、
私は、別の会館事務所でパネルの作成をしていた。
DVDに関する社長の意図が、「会社のものをより多く」ということであれば、
パネルの内容もそれを反映しなければならない。
そんな訳で、Mさんはまだ式場準備に追われていたので、
新入社員のHさんに送ってもらって、パネルの製作に取り掛かった。
Hさんは私と同じくらいの年齢で(若干先輩ですが)、
入社して一年程度ということらしい。
今では担当も持っているが、社葬は初めてだと言う。
とても物腰が柔らかく、パネルの製作も手伝ってくれるということで、
ご好意に甘えることにした。
そこで、折角だから、
DVDの映像も見てもらって感想をもらうことにした。
工場長:「明日の社葬で流す予定のDVD映像なんですが、
こうこうこういう理由で社葬向けに作り直したんですよ。さっき。」
Hさん:「そうですか。……うーん。ちょっと言いにくいんですが、
なんか、家族と会社の写真が入り混じって焦点がぼやけますね。
それに、時間も長くないですか?」
工場長:「…」
Hさん:「いやぁ、すみません。」
工場長:「実は、私も何か収まりの悪い感じも受けていたんですよね。」
Hさんに率直に言われて、
なるほど、自分で意識しながらも、
会社と家族の写真が入り混じった中途半端な出来になっていたか。
【ハロー効果】ってやつだな。
それで、会社用のパネルを製作する前に、
再度、抜本的に会社を主としたDVD映像を作り変えることにした。
DVDは30分程度で作成できた。
私の中でも、Hさんに指摘を受けて完成図が見えたのだろう。
そして、もう一度Hさんに見てもらう。
Hさん:「こっちの方が(断然)良いですね。」
工場長:「ありがとうございます。Hさんのおかげですね。
後でMさんに、両方を見てもらって最終判断をゆだねましょう。」
23時。
必要なパネルも全て完成。
ふー。
Hさん、(新婚なのに)遅くまで手伝ってくれてありがとう!
そして、私とMさんは本日最後のお仕事。
式場に戻ってDVDの映像チェック。
家族と会社の写真が半々なもの、そして、ほぼ会社の写真のもの、
どっちを選ぶか。
Mさん:「後で見たほう(ほぼ会社の写真)で行きましょう。」
工場長:「わかりました。」
Mさん:「ただ、ご家族の写真を1枚、入れてもらっていいですか?」
工場長:「問題ないと思います。ご家族の支えがあってこそ、
会社の繁栄もあったと思いますので、
そういう意図で、締まる箇所に入れましょう。」
工場長の仕事は、どうやら、もう少しありそうだ。
明日の社長の確認まで、私自身も満足できそうなものができる。
<井手の割り込み>
午前2時。
人がせっかく寝酒を飲んで楽しく過ごしているのに、
「今ホテルへ戻りました」と工場長からのメールが。
11時頃にも電話でコンタクトを取っていたけれど、
さぞ遅くまで仕事をしていた…と言わんばかりである。
私は、こんなに頑張っているのだと。
要領が悪くて、仕事が遅いだけなのかも?
ダハッ…お疲れさんどした。
(…翌日へつづく)