実家のお墓は埼玉にあります。
お寺の檀家になりお墓の土地を購入した父と母。
生涯、都営住宅に住み自分の家を持たなかった両親は、
死後は広いところでと考え、そのお寺では広く区分けされた場所を購入しました。
そして、父が亡くなったとき、
母は父の為に、何段階かあった墓石の中から一番良い(高い)石を選びました。
実家からお墓までは車で約1時間。
自分で運転する母は毎月お墓参りへ行っていました。
しかし、母も年を重ね体調を崩しがちになってからは、なかなか行けなくなりました。
そんなある日、母が夢で部屋中に蟻が沢山いる気持ち悪い夢をみたとのこと。
電話で聞いたものの、特に気にもとめませんでしたが、
数日後また母から電話があり、夢は死んだ父からの知らせだったと言うのです。
何でも、久しぶりにお墓参りに行ったら蟻が沢山墓石の上を這っていて、
その列をたどっていったら花筒の水はけの穴に入っていったので、
中を覗いたら蟻の卵でいっぱいだったそうなんです。
思わず声を上げてしまった程、気持ちが悪かったとか…。
「パパも気持ちわるかったんだろうね。
蟻が部屋中にいる夢をみせて私に知らせたんだよ」
と、真剣に語る母。
へぇ~、不思議なこともあるのね…と思いました。
そして最近、母の体調が落ち着いているようなので「父のお墓参りに行こう」と誘ったら、
また夢をみたから早く行きたいとのこと。
今度は孫と一緒にお菓子を食べていたら、
そのお菓子に沢山の虫がわいていた夢をみたそうなんです。
母はお墓参りの日、殺虫剤など万全の準備をしていました。
いざお墓に到着。
そしたら…遠めにも分かるほど、うちのお墓だけ、どす黒い。
きみの悪いもので覆われていました。
近づいてみると、山ほどのカラスの糞でした。
すぐに「それ」と分かったのは、以前私の嫁ぎ先のお墓でもこういう事があったからです。
最近は少なくなったものの、お墓にお供え物をそのまま置いて帰る人がいて、
それをカラスが食べるのです。
消化するものなら良いのですが、消化できなかったものは糞に混ざって排出されます。
季節によっては鼻が曲がるほどの悪臭になります。
不思議と一箇所のお墓に集中的にするのです。
…一時間ほどかけ、お墓をきれいさっぱり洗い清めました。
満足げな母は「やっぱりパパはここに居るんだよ」と小さく呟きました。
千の風に乗って飛んでいても、お墓にはいつも帰ってくるのでしょうかね…。
いずれにしても、久しぶりに父の温もりを感じたような懐かしい気持ちになりました。