ということで、ボランティアスタッフ達で、
中古のピアノを寄付してくれる団体を探そうということになった。
団体を探していく中で、
あるライオンズクラブがそのような事業をしていると知り、問い合わせてみた。
ピアノの寄付には厳しい審査もあり、正式な申請が必要とのこと。
ある日、ライオンズクラブの方が来てくださって、
私はピアノを弾いている者としてのお願いと、意見を言わせていただいた。
「この場所は、ホスピス病棟です。
病気で、ご自身の命の期限が見えている方が入院していらっしゃいます。
私は、週に1度ほど伺ってピアノの演奏をしています。
様々な曲を弾きます。患者様からのリクエストも多いです。
患者様は、ご自身の人生の中で出会った音楽をリクエストくださいます。
その方にとっての、なつかしい思い出の音楽の場合が多いです。
私は楽譜を探してでも、なるべくお応えするべく弾いて差し上げます。
現在のこのピアノの状態は、中音から低い方になると音が響き過ぎてしまう。
低い場所では音が狂っていて、すでに調律でも直せない場所もあり、
演奏だけならどうにかごまかせても、
歌いながら弾く時は、声とピアノの音が違っていて、非常に違和感があります。
どうか、この機会に、ピアノをご寄付いただければ、本当にうれしく思います。」
というようなことを熱く語った。
そして年が明けて、朗報が舞い込んだ。
ライオンズクラブがピアノを寄付してくださることになった。
しかし、ピアノは病院側で探すという条件付だった。
私は、少しはピアノが分かっている者として、病院側からピアノ探しを任命された。
実は、それからが大変だった。
中古のピアノを買うために、色々なもので検索してみた。
今や、インターネットでピアノが探せる時代である。(すごいこと!)
値段や、種類、色、製造年等など、色々な探し方があったが、
結局は、実際に弾いてみた感じがどうか…ということが大事だと分かった。
そこで、ある有名な中古ピアノ販売のショールームに行ってみた。
1回目に行った時は、何十台も並ぶピアノに圧倒されながら、
その中から、値段と、製造元、鍵盤、ハンマーの具合…等などをチェックした。
色々な種類のピアノが置いてある。
木目調や猫足のもの、バロック調…様々だ。
韓国製をはじめ外国製のピアノも多い。
しかし長く使いたいのであれば、黒い色の日本製(ヤマハ)が一番良い!
ということだった。
大体の値段と、ピアノの状態を目で見て確認した。
少しだが弾かせてもらった。
しかし販売員の女性が、私の側にピッタリとくっついて、
(私は、どこにも逃げないのに…)しゃべり続けるものだから、
なかなかゆっくりと弾いて見つけることが出来ない…。
「もっと、落ち着いて探したいのに…」「一人にして欲しいのに…」
「お客さんの気持ちが分からない人だなあ…」と思いながら帰ってきた。
そこで2回目に、いよいよピアノを決めに行く時には、夫を連れて行った。
夫には販売員の女性と話をさせておいて、
私は片っ端から、めぼしいピアノを弾いて行った。
金額とメーカー、製造年などを見比べて、やっと見つけた。
小1時間くらいは、弾いていただろうか。
私が探している間、ショールームは、まるでピアノラウンのような雰囲気だっただろう。
他に数人のお客さんや社員もいたが、気にしていたら、買うピアノを決めて帰れない。
触って、弾いて、音を体感して、初めて気に入ったピアノを決めることが出来た。
2週間ほどで様々な手続きが終わり、新しい(中古ですが)ピアノが、
ホスピスのラウンジにやってくる。
2月16日に、そのピアノの「弾き初めのセレモニー」をすることが決まった。
もちろん私も参加して、ホスピスのために作った曲を弾こうと思っている。
今からとても楽しみである。
しかし、ピアノ探しは、すごく大変だった。