膨大に記録されたチップの編集作業は、専門業者がいて…
(これが主人公のロビン・ウィリアムズなんだけど)
全データから無用と思われる、例えば睡眠などを大幅にカットし、
残ったデータを更に10代、20代、30代、40代…と分類していく。
延々と細かな作業を繰り返し、人生を1時間30分程度に収めていた。
全てが故人の主観映像だけど、他人に見られたくない場面はたくさんあるし、
…考えただけでもぞっとするよね…余計な部分をカットして、
見事に遺族好みの「素晴らしい人生」に仕上げていく。
映画のストーリーはこれとは別に、ミステリアスに進行するんだけど、
正直言ってつまらない、駄作だと思う。
ただ「ゾーイチップ」という着想が面白いので、撮り直した方がいいかも。
気になる方は、レンタルDVDでどうぞご覧ください。
この作品では極端に描いてあるが、
死んでしまえば誰もが「いい人」で、「素晴らしい人生」という風潮に、
警鐘を鳴らしているかのようである。
共感できる部分も多い。
20年前、葬儀というセレモニーに故人のナレーションを導入したばかりの頃、
ある種の衝撃を持って受け入れられた。
それは当時としては、新しい演出方法の一つだったからだ。
…譬えブライダルからの横滑りだったとしても…
その後、賛否両論渦巻く中で、今では一つの演出法として確立されている。
(中味やクオリティはこの際無視しましょう)
今、追悼DVDなるものが、デジタル化された社会の中で、
技術的な裏づけを支えに実用化されて席巻し始めている。
遺影写真のデジタルデータ化は、すでに完了していると言って過言ではあるまい。
益々デジタル化されていく社会の中で、葬祭業界に大きな懸念がある。
ナレーションの雛形に、氏名と年齢だけを書き込んで読むことが、
どれだけ低レベルの司会演出であるか…と同じように、
遺族に借りた思い出の写真の編集を、スキャナで読む取ることから業者に任せ、
デジタルデータの提供だけを受け取る行為は、自分の首を絞めることにならないか。
薄っぺらな人生賛歌、死んでしまえば皆「いい人」に仕上げていく、ただの作業。
デジタルを扱えるようになろうとは努力せず、まるで放棄しているかのように。
社会の変化についていけない者が、たやすく生き残れるとは思えない…のだが。
「故人の尊厳を守り、遺族の悲しみを大切にすること」とは?
難しい問題だね。