« どうぞ末永くお幸せに・・・ (石川 元) | メイン | 親戚の一周忌法要 (井手一男) »

2007年05月04日

叔父の葬儀(加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

父のすぐ下の妹の連れ合いが亡くなった。
肺がんで、あと3ヶ月という宣告を受けて、1月余りのあっけない死だった。
葬儀のことも心配だったので、それとなく叔母に打診をして、
相談に乗ろうと思っていた矢先だった。

叔母は、実家のある茨城から福島に嫁いでいた。
色々な事情でしばらく実家のそばに戻って暮らしたこともあったが、
今は、夫の地元に落ち着いていた。
父も弟妹たちもいつもその叔母のことを心配していた。
私は年老いた父の代わりに葬儀をサポートしようと、
叔母の親族の中でも一番先に駆けつけた。
日程によってはそのまま葬儀という場合も考えて、
喪服と着替えを少々、カバンにつめて出かけた。
死去の電話を受けて1時間後には、福島行きの「やまびこ」に乗っていた。

叔母の嫁ぎ先の東北自動車道インターを降りたバイパス沿線には、
ナンと4つの葬祭ホールが建ったという。
その中のひとつ、2月にオープンした互助会系列の葬儀社で叔父の葬儀は営まれた。
まだ新しい匂いがするホールは、広々としてきれいだった。
まるで福島県にいるとは思えないような・・・。
都会風のインテリアとホールの間取りである。
一つ難を言えば、親戚控え室は狭かった。
両家合わせると軽く30人にはなる。
控え室での納棺は、棺台や棺が入るといっぱいになる洋室と、
ご遺体が安置された和室・・・シンク周りとトイレもとても狭かった。
かっぷくのいい次男は、トイレの度に控え室外の化粧室へ行っていた。
ホールやロビーを広々とすると、どうしてもしわ寄せが来るのだろうが・・・。
部屋に鎮座している、大きなマッサージチェアも邪魔だったなあ・・。

私の身内が、互助会で葬儀をするのは初めてだった。
他の親戚で、見積もりまで付き合ったことがあったが、
総額の折り合いがつかず他社に変えた経緯がある。
叔母もその互助会には入ったばかりで値段のシステムを理解していなかったらしい・・・。
葬儀の見積もりは、東京から駆けつけた次男が、担当者と折衝していた。
私も心配だったので隣で付き添っていたが、どうも書いてあることが分からない。
一般料金と会員料金・・・。
なぜ、必要が無い料金まで、見積もりに書くのだろう・・・。
「会員様はお安くさせていただきます」という意味なのだろうが、
この時代に随分古い表現方法だ。
ココとココを足すと、こうなって・・・。
ココからコレを差し引くと・・・・・? カラクリがあり過ぎて、不親切。
そして、ソレに対する説明が皆無。
見積もりというのは、素人さんにもひと目で分かるものでないと、意味が無い。

大体の遺族は、見ても分からないので総額のところだけ見て
「まあ、いいか・・・」「お任せします」と言ってしまうのだろう。
だって担当者は「印鑑をください」「印鑑が無いと、進められません」、
「もう、すでに花屋さんは、仕事に入っていますから・・・」というような、
言い方は非常に丁寧だが、脅しのようにも聞こえる言い回しをしていた。
ところが、会社を経営していて経理の専門家である次男は引き下がらなかった。
「あっぱれな息子じゃ!」
彼は、無意味に怒っているのでは無い。
極めて冷静に、担当者に説明を求めているのだ。
「祭壇花、お別れ花・・・やたら花束ばかりが書いてある」と全部説明させている。
私は担当者がどういう出方をするのか、興味深く聞いていたが、
非常に冷静に応えていたと思う。
葬儀社側の言い訳に終始するのかと思ったが、
多少なりとも遺族の気持ちに「向き合う姿勢」を感じた。
でもこの見積もりは、どうにかして欲しい・・・。

葬儀のお客様として、葬儀社側に聞きたいことは遠慮なく聞く、
ということは非常に大事なこと、遠慮はいらない。
誰だって、身内の葬儀で後悔はしたくない。
そして葬儀社側は、お客様が納得するまで、説明を尽くすことが必要だ。
中にはこういう遺族を「クレーマー的、厄介者」として扱う葬儀社もあるが、
この場では、葬儀社側と遺族の対等な関係を見たような気がして清清しかった。

告別式の朝に、「あだたら聖苑」という火葬場に向かった。
7年前に出来た広域斎場である。
霊柩車が到着すると、女性のスタッフ2名が出てきた。
ご遺体を受けるところまでが女性のスタッフかと思ったら、最期のお別れも、
炉に入るところも、収骨も、すべてその女性スタッフがお世話をしてくれた。
その方の動作の一つひとつ、言葉がけの一つひとつが、本当に素晴らしかった。
心がある、暖かさがある。
この女性的な丁寧さは男性には出せないだろう。
最後まで、しっかりと、きっちりと、そして尊厳を持って、お骨を拾ってくれた。
最後に帰る時「本当に上手にしてくださって、ありがとうございました」と、
思わずお礼を言ってしまうほど、私は感動した。
女性の火婦さんはめずらしい。
でも、女性でもここまで出来るということが良く分かった。
どんどん女性の火婦さんが増えて欲しい。
この火葬場の男性スタッフがどのようなことをするのかは知らないが、
多分、他のスタッフもレベルは高いだろう。
柩が到着して火葬場の中に入る時、お骨になって火葬場から出る時、
事務所の奥にいる女性スタッフが、窓ガラス越しにも椅子から立ち上がり、
丁寧に私たちの葬列に向けてお辞儀をしていたのを私は見逃さなかった。
「あだたら聖苑」もう一度行ってみたい火葬場になった。

叔父の葬儀を通して、
「遺族も、もっともっとお葬式の勉強をしないといけないなあ・・・」と思った。
葬儀社の言いなりになって、後から「こんなはずじゃ無かった・・・」と、
文句を言うのではなく、葬儀社との対等な立場で、葬儀の前準備をすることが、
とても必要な時代になっている。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2007年05月04日 00:18

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mcpbb.com/blog/mt-tb-funet.cgi/1051

(C)MCプロデュース 2004-2013 All Rights Reserved.