もう何年も前から、法事に出ては住職の隣に座ることが多い。
お寺の住職というのは、なかなか取っ付きにくいタイプと思われている。
正直…面倒くさいからお前が相手をしろ…というわけで押し付けられる。
私は浄土真宗本願寺派だが、お他宗派の方とお話が出来るのは好きである。
葬儀の仕事を長く続けているので盛り上がることこの上ない。
…話題に事欠くことがないのだ。(相手が無理に合わせている場合を除けばだが)
で、今回のお話を少々。(あくまでも酒の上での話ですよ)
住職が勤めたのは、開経偈・般若心経・修正義4章の発願利生・
寿量品偈・舎利礼文・略三宝だったと思う。
(他宗派なのに良く判るのが面白いです)
法要後、私が献杯を担当して(真宗は献杯って言わないけど、私は堂々と言います)
ひとしきり自己紹介などが終わると、早速興味を持ってくれた。
私が築地の本願寺へ通っていたからだ。
「得度は済まされましたか?」
「いえ、引き受けて下さるお寺が見つかりませんので」等と話が弾み、
「…失礼ですが、お仕事は?」
「実は、葬儀スタッフへの講習会をやっているんです」
「へえー、どんなことを?」
「葬祭ディレクター、葬儀司会、葬儀接遇…」
「全国を回るんですか」
「一年間で、ほぼ一周しますよ」等と言い(相手は驚きます)、
具体的に研修会をイメージしてもらうため、
例えばということで、今日のお勤めの内容を話したら凄くビックリされた。
「違う宗派なのに分かるんですか?」
「大雑把ですけど、一応一通りはやります」
「どの宗派もですか !?」
「ええ、お経や偈文と、スタッフの動き出しのきっかけ位は掴んどかないと…」
「本当ですか、凄いですねえ」
そこからは、葬儀の在り方やお経談義と相成っていった。
葬儀の在り方については、私の方からもご提案したがいずれまた。
ここでは、お経談義について。
開経偈は、出典が不明で、もしかしたら日本人が作ったものではないのか。
それにしちぁ、素晴らしいお経・偈文だ。
般若心経は、仏説摩訶般若波羅蜜多心経と言いその意味するところ。
これは質問コーナーに書いてるので割愛しますが、
話題の中心は高僧の大胆な訳について。
修正義は、お釈迦様が作ったものではないし(日本で成立)、
また、その問題点(差別的要素を含むとも言われる)についても。
これは少し暗い話になっちゃった。
寿量品偈は、曹洞宗=道元禅師の法華経信奉が垣間見られること。
「曹洞宗は・・・法華経だよ・・・」と酔った勢いでつい。
舎利礼文は通常3回だが、葬儀の現場では時間調整に使うことが多い。
金の打ち方で、リピートか終わるかが決まるのだ。
これは知らないと損ですぞ。(場所はご自分で探してね)
一般にセレモニーの打ち合わせは、維那としますよ、
導師ではありません(導師が兼務することあり)で、舎利礼文を掲載します。
(4言18句のもので唱えるときは、普通は3回なのだが…)
一 心 頂 礼
万 徳 円 満
釈 迦 如 来
真 身 舎 利
本 地 法 身
法 界 塔 婆
我 等 礼 敬
為 我 現 身
入 我 我 入
仏 加 持 故
我 証 菩 提
以 仏 神 力
利 益 衆 生
発 菩 提 心
修 菩 薩 行
同 入 円 寂
平 等 大 智
今 将 頂 礼
略三宝は、例えば浄土宗で言うならば、十念みたいなもの。
各ブロックが終了する毎にお唱えしている。
だから最後は、一般に導師退場の偈文だね。
掲載します。(これも憶えてちょ)
十方三世一切仏(じーほーさんしーいーしーふー)
諸尊菩薩摩訶薩(シーそんぶーさーもーこーさー)
摩訶般若波羅蜜(もーこーほーじゃーほーろーみー)
…お酒を酌み交わしながら、こんな話をしてました。
葬儀業界の研修会で、こんなレベルの高い話が出ているのかと感心していました。
だって、僧侶の会合では、もっと低俗な質問も出るそうです。
僧侶に失礼だから、ここは秘密にしときます。
そして最後に住職からの法話。
四苦八苦(しくはっく)…四苦とは、生・病・老・死のこと。
ただ四苦八苦ですから、合わせて八苦ということですので、残りは4つ。
一つ目は愛別離苦(あいべつりく)…
愛する人と別れる苦しみ、別れなければならない苦しみ。
二つ目は怨憎会苦(おんぞうえく)…
怨んでたり憎んでたり、嫌な人にも会わなければならない苦しみ。
三つ目は求不得苦(ぐふとっく)…
どんなに頑張っても、欲しいものが手に入らない苦しみ。
四つ目は五陰情苦(ごおんじょうく・他にも表記方法がある)…
人間の肉体と精神を5つに分けて表したもののことに執着する苦しみで、
例を挙げると、食欲や性欲など生きていること自体で生まれてくる苦しみかな。
存在していることによる苦しみとでもいいますかね。
ただ四苦八苦には、どれも「苦」という字を使っているけど、
「苦」というのはサンスクリット(インドの古い言葉)を訳す時、
ちょっとした誤解を生んでしまったのであり、
「どうにもしようがないこと」という意味合いだそうだ。
人生には、「どうにもしようがないこと」で一杯だそうである。
四苦八苦の法話は良くあるが、「苦」についての解説が珍しかった。
仏教って、奥が深いよねえ。
いつのまにか時間が経って、少しほろ酔い気分。
「今度遊びに来てください」となって、その内お邪魔しようと思っている。
こうして、親戚の一周忌が無事終わった。
<おまけ>
今日はレコーディング。
もう2年間録音を続けている。
今回は主にプロローグの「オールマイティ」だ。
これが終われば、次の段階へ進める。
そして明日から福岡へ出張だ。