祭壇は花祭壇。
こだわりのある無宗教のお別れ会は、
ほとんど花祭壇のような気がします。
今回の花祭壇のイメージは、担当者曰く、
「全体として【山】を表現していて、遺影を囲む赤い花のラインは、
故人の趣味だった鉄道の【線路】をイメージしています。」
とのこと。
仏式では、赤い花は滅多に見ないので際立っています。
また、祭壇中央の下部分にはプラズマテレビが入っており、
故人が撮影した汽車映像が、編集された形でリピート再生されていました。
ここまで宗教色が無く、故人らしさが溢れていると、
【祭壇】とは言うよりも、むしろ故人を送るための【花飾り】、
もしくは、【オブジェ】と書いた方が自然な気もします。
宗教性が無くなることで、【葬儀】が【お別れ会】になるように、
今回のような花祭壇にも、新しい呼称が必要なのかもしれません。
(無宗教で祭壇ってのも変ですからねぇ。)
式は、14時に開式しました。
開式の合図とともに、『フォワーーーーッ』と汽笛の音。
鉄道が好きだった故人に合った始まり方。
司会の石川さんは、タイミングを合わせるのが大変だったでしょうね。
その後、実行委員長の挨拶、弔辞、献唱と式は進みます。
献唱は、「千の風になって」。
お別れ会の定番の曲になる可能性はありますね。
そして、喪主挨拶、献花へ。
献花の際には、高校生の息子さん(故人は50代でした…)のバンドが、
「いい日旅立ち」をBGMとして演奏していました。
格好はバンドをやってる高校生らしいのですが、
そのさりげない献奏が、私にとって最も感動的でした。
(担当者に伺うと、ギターやドラムのアンプの調整が、
今回の葬儀で最も時間がかかったとか…。
その甲斐は、十分にあったのではないでしょうか。)
献花が終わると、再び汽笛が鳴り、閉式となりました。
全体において、汽車が好きだった故人らしい、
お別れ会だったと思います。
さて、この葬儀のもう1つの(もしかしたら、最も大きな)特徴は、
この進行を、故人が自分自身で考えた、ということでしょう。
「私の最期のイベントは、私らしく演出したい」
「客入れの曲は、旅の歌がいいなぁ」
「実行委員長は、○○さんに頼みましょう」
「メモリアルコーナーには、鉄道写真と模型を3,4台」
「献花のときのBGMは息子が演奏してくれたら最高だなぁ。」
…などなど、ワードで6ページくらいでしょうか、
故人が亡くなる前に書いていたそうです。
私も読みましたが、一般の人とは思えないほど丁寧に、
細かくお別れ会の進行を書いていました。
流行している【自分史ノート】の雛形に合わせて…という訳ではないでしょうが、
そういう本を参考にしているのかもしれません。
石川さん曰く、
「ここまで宗家(故人)が葬儀の進行をリードすると、ブライダルみたい。
仏式だと進行がある程度一様だから葬儀屋さんもやりやすいだろうけど、
今回のようなお別れ会が多くなると、大変だわね。」
私も同感です。
家族葬向けの会館を作ったりする葬儀社は、最近増えているようですが、
今回のような無宗教葬儀は、そういうハコを作るだけでは対応できないと思います。
会館の形態というより、むしろサービス業として担当者の対応力が、
本質的に問われてくるのかなと思います。
特に、近隣のしがらみの少ない都市部では、「故人らしさ」を求める葬儀への意識が、
今後もますます強くなるのではないでしょうか?
故人らしいお別れ会の実現に向けて尽力した、
遺族や実行委員長は、大変だったでしょうね。
でも、故人の最期の我がままを聞くのは、
そんなに悪い気分ではないのかもしれません。
葬儀社の方々、石川さんも含め、皆様お疲れ様でした。
故人のご冥福をお祈りいたします。