私の手元に「株式会社ヌマザワ」さんという、葬儀社が制作したDVDがある。
かなり本格的に映画作りにチャレンジしていて、脚本も演出もしっかりしている。
俳優に関しては(僕には云いたい事もあるけれど)…立派に演じていた。
葬祭業界は、これまでにも映画製作には携わってきたが、
何がしかの団体としてだったり、協賛という形でだったり…であろう。
単独の葬儀社として、堂々と制作するのは初めての試みではないだろうか。
何だかんだいっても、やり切るところが凄い。
先日加藤が事務所に来て、そのDVDを観ていた。
お茶を飲みながら、お菓子を頬張りながら、じっと観ていた。
お茶がコーヒーに代わって、お菓子がケーキに代わっても…観ていた。
テレビの一番真ん前に座り、「うんうん」と頷きながら観ていた。
自分が接遇研修会に呼んでいただいた時のスタッフが出演してると、
「あー、嬉しい!頑張ってるんだー」との叫びよう。
「頑張ってー、失敗しないでー」と合掌して、神にお祈りしている。
(誰が失敗するんだよ、お前は…親か?)
私も研修に伺ったことがあるが、ヌマザワさんの素敵なホールが画面に映ると、
懐かしいやら、どこか恥ずかしい、そんな気持ちになってしまった。
残念ながら…加藤も言っていたが、司会者役は女優であった。
(当たり前っちゅうねん!)
ハタと気づいた。
一体我々は…作品の中味については関心が薄すぎる。
あまりにも近いからこそ、つい寄り添って応援してしまうようだ。
DVDと共に送られてきた「ありがとうラーメン」…ではなく(包装が素晴らしい)、
映画制作にかける社長の説明書を読んでみよう。
(以下、抜粋ね)
紫陽花物語の制作意図は「家族の絆」であるらしい。
同時に、葬儀の意義や儀礼文化の啓蒙だということ。
映画の舞台となった新庄市には、エキストラとして市民から100名の協力を得たり、
完成作品は、新庄祭の期間中や地元出身者が帰省するお盆を中心に無料上映されたり、
つまり、町おこし的要素を多分に含んでいるらしいのだ。
一般に葬儀の意義を説くセミナーや小冊子の制作などで消費者に啓蒙活動しているが、
それが映画ということになると、しかも単独の葬儀社となると、初の試みであると…。
うーむ、なるへそ。
映画の中では、所謂「エンディング・ノート」の話題が出て、
故人らしさ(の追求)や、遺族それぞれの(故人を中心とした)想いが描かれ、
そして遺された者たちの心の葛藤が、新庄の街を背景に刻まれていく。
ラストは、それら全てを包括的に見せる花「紫陽花」が画面いっぱいに広がる。
それは、本当は故人が一番好きだった花…しかしエンディング・ノートに書けば、
残された者たちが悲しむのではないか…なぜなら紫陽花は新庄市の花だから。
多分気遣った故人は、エンディング・ノートには「百合の花」と書いてあったのだ。
ラストで少しドラマを落として、完結している。
で、見終わった後。(一応かつての俳優の私が)
「えっ、何でかなあ?」
「どうしてかなあ?」
「オファーがないと思っていたら、えっー???」
と、やってみせたら大ウケだったのだ。
一本の映画作りが、大変な仕事なのは分かっている。
素直に「お疲れ様でした」と言いたい。
因みに、このDVDは市販されていない。
実は本編と共にメイキングも同時収録されていて、なかなか楽しい。
いやあ、頑張っている葬儀社に励まされた感じだ。
本当にお疲れ様でございました!