千葉の小さな田舎の駅に、350人以上がごった返している。
このまま乗っていても良いそうだが、朝まで列車は動かないそうだ。
「もし仮に乗っていたとして、安房鴨川に到着するのは?」
当然のように私が聞くと、車掌さんは答えた。
「えーと、朝は特急電車そのものがないので9時頃になりますね」
(9時から始まるんだよセミナーは)
降りるしかないので、とりあえず下車。
オッ!何事だ。
何だか黒山の人だかりが…。
「…バスの乗車券を配っております…この先の…」
えっー聞いてないよ俺!…と慌てて取りに行く。
299番。
これって、どういう意味?
やがて、その全貌が明らかになってきた。
このド田舎の、この小さな駅舎の、横殴りの風に乗って台風が吹き込む待合室で、
駅の係員は汗水垂らして、こんな状況の日に当番になったことを恨めしく思いながら、
必死で説明して回っていた、まるで自分の流す汗に免じて許しを請うみたいに…ね。
(おっと、怒りが収まらないのでスマン)
その彼が言うには、この駅舎からバスが出ています。
1台に40人乗れます。
行く先は勝浦です。(安房鴨川じゃないのかよ)
終点の安房鴨川まで行かれるお客様もこのバスに乗って勝浦で乗り換えてください。
とまあ、一息で一気に言いやがった。(横から口を挟まれたくないのだろう)
では、ご案内いたします。
バスの乗車券の1番から40番までのお客様!
ガ~ン、ガ~ン、ガ~ン、ガチョーン!な~に~!
俺様の持っているバスの乗車券は299番だっ…(絶望)
「あのう、バスは何分に1回来ますか?」
「そうですね、いい質問です…40分」だってさ。
まあ、7台目(7往復するバス)位には…乗れるのかなっ。
て、馬鹿たれ何がいい質問だ、何時になるんだよ。
さらに勝浦から安房鴨川までは、乗換えだぞホントにもう。
タクシーと呼んで、すぐ来る地域は都会です。
ここは千葉、ましてや上総一ノ宮って何処だか知らないけど・・・。
いずれにしても、タクシーはいなかった…
あれっ、良く見るとタクシー乗り場がバス停の横にあるではないか。
暴風域の中に飛び込み、雨に打たれて待つこと…7分…ラッラッキー!!!
タクシーが、イエローキャブが、向こうからやってきてくれました。(ぐすん)
びしょ濡れの私は、それでも徐(おもむろ)に乗り込み行き先を告げる。
「安房鴨川」(キャー恰好良い)
「えっ、ちょっと待ってください。道を問い合わせますから」
(えっ何々…どうしたのよ?)
どうやら通行止めになりやすい場所があるらしく、問い合わせてくれているのだ。
親切だなあ…田舎のタクシーの運ちゃんはさ…ありがたいですな。
それから1時間15分タクシーに乗って、安房鴨川までぶっ飛ばしてもらった。
途中2度ほど横風に揺られて、大きく体制を崩したけれども無事。
(肝を冷やしたぜ、まったく)
車中から宿泊予定のホテル(旅館)への電話。
「あのう、今日宿泊予定の井手と言いますが、台風で…」
先方は事情をご存知だったようで、
「そうですか、それは大変だったですね、えっ、お待ち申し上げております」
「あのう、食事は?というか、何か食べるものはありますか?」
「生憎、夕食のご用意はございませんのですよ」
「でも、夕食というほどじゃなくても、何か腹に入るものはありませんか?」
「折角なのに申し訳ございませんが、扱っておりません」
「カップヌードルとかパンとかありませんか?」
「…申し訳ないです」
「…」
気を取り直すしかない。
「運転手さん、何処かで食い物を調達したいんですが」
「わかりました、コンビニで止めましょう」
「くー、この運転手さんは親切でありがたいですなあ」
こうして食い物も手に入れ、無事に旅館に到着。
とりあえずチェックインして、せめて朝食の確認を。
「朝の8時からになっております」
「えっ、送迎の車が8時半ですよね」
「はい、さようでございます」
「…もう少し早くなりませんか?」
(いくらなんでも、朝飯の時間遅いよね)
…どうにもならんらしい…千葉時間かよっ!
致し方ない、せめて温泉でゆっくりと…。
部屋着に着替えて、いざ温泉へ。
げっ、3人風呂でした…洗い場が3つしかありましぇっーん!
泳げませーん、潜れませーん、ゆっくり浸かれませーん。
いやはや、こういう日もたまにはあるでしょう。
何をやっても、ついてない日、運から見放された日。
早く眠りましょう、明日のために。
さあ、明日は2度目の研修会。
頑張るぞ!
(Zzzzz)