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2008年03月07日

話のプロ (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

東京は浅草の真宗・寿徳山・最尊寺が、永六輔さんの生家。
彼はお寺の息子でありながら、下町っ子で江戸っ子。
ラジオのパーソナリティ、また作詞家としても、つとに有名。
そんな言葉のプロである彼が、その感性を存分に発揮している「庭説法」(本願寺出版)。
これがすこぶる面白い本である。

昨年の暮れ、虹を翔るお坊さん 2007東京ボーズコレクション(TBC)が、
築地別院で開催され、その時にも永さんは庭説法をやってらっしゃる。
元来、静岡県伊東市の宝専寺の境内で、毎年開かれる園遊会のトークショーだった。
長年続けてきたトークショーを、これを機会に一冊の本の形にしたのである。


永六輔という話のプロは、さすがに笑わせてくれる。
以下少しばかり抜粋したい。(庭説法より)

曹洞宗大本山永平寺から、永さんへ電話があったそうだ。
「永平寺の宮崎だが、君に会いたいから来ていただきたいんだ」
(宮崎って言われても知らないし…会ったこともないなあ)
「存じ上げてないですけど…」
「とにかく、君に会いたいんだ」
「で、すみませんが、『会いたい』って言う方が、(こちらに)来るんじゃないですか」(笑)
(普通はそうだけれど)
「俺は百六歳で、足腰が動かないんだ」って。
「足腰が動かないんだったら、行きます。すぐ行きます」って、永平寺へ行ったの。
その宮崎さんの周りがね、神経使っているっていうか、
「永さん、恐れ入りますが『宮崎さん』っておっしゃらないように。『猊下』(げいか)っておっしゃってください」
(言いにくい。猊下なんて言ったことないものだから)
「宮崎さんでいいんじゃないの?」
「いえ困ります。私どもは『猊下』って呼んでおりますので、『猊下』っておっしゃってください』
猊下に会うなり、「『宮崎さん』っていうのと『猊下』っていうのと、どっちがいい?」って聞いたら、『宮崎でいいよ』って言うから。(笑)
「宮ちゃんでもいい?」
「宮ちゃんでもいい。わぁー、宮ちゃんでいいよ」
そんなもんなんですよって。

爆笑ものである。
しかも、かなりの嘘が混じっているのが面白い。
さすがに話のプロだから、嘘と言っても誰も傷つかない「方便」の使い方が抜群である。
永さんが、まさか永平寺の宮崎猊下を知らなかったとは思えない。
会ったことはなくても、そのお話ぐらいは耳にしているはず。
電話だって、こんな掛け方はしないはず。(でも笑える)
また「宮ちゃん」のくだりも笑えるけど、そっくりそのまま真実とは思えない。
そして浄土真宗の教えの一端(平座…誰でもが平等)を垣間見ることが出来る。
他宗派の縦社会を少しだけ皮肉って、誰でもが笑えるようにしているのか。
結局この項で言いたいことは、ラストの「そんなもんなんですよって」。
そして話題は、これからが本題に入っていくのだ。
この後も、抱腹絶倒のお話満載ですから、本編でどうぞ。

本年1月5日、大本山永平寺 宮崎猊下がお亡くなりになられました。
正式には、宮崎奕保(えきほ)貫首と言うのでしょうが…。
宗教指導者としては最長老、明治34年生まれの106歳でした。
合掌。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2008年03月07日 09:00

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