『家族葬』は、以前からずっと世間で言われている単語ですが、
私が良く聞くのは、例えば、
「最近は家族葬が増えて、客単価が伸びなくて…」
「家族葬の需要が高い」
「いわゆる家族葬ですか。身内の方だけ呼んで、葬儀をする。
呼ばれなかった方はお別れが出来ず、
それでいいのかという思いもありますけど…」
という感じで、会話に出てきます。
『家族葬』が何なのかという定義には諸説あるようですが、
私が聞く限り『客単価の低い、会葬者の少ない小規模葬儀』という文脈と、
セットで出てくる単語のように感じます。
そのような葬儀社との会話や文脈から思うことは、首都圏の葬儀においては、
① 会葬者が減っている。
② 今までの葬儀ビジネスは、会葬者に葬祭単価を依存してきた
ということです。
会葬者が減っていることに関しては、
人と人との繋がりが薄くなっている…ということの表れでしょう。
近所付き合い…なんて言葉はほぼ死語です(首都圏では)。
逆に、地域の相互扶助は煩わしい、面倒くさいと感じている人の方が、
多いと思います。
あと、もしかしたら、こちらの方がより深刻かもしれません。
それは、会葬という行為自体に価値を持てない、と考えている人が、
増加していることです。
つまり「香典を渡して焼香をして帰る」という機械的な行為では、
本来会葬者が望んでいたお別れができない…ということが、
会葬の価値を減退させ、結果的に会葬者を減らしているということです。
繋がりの薄さは社会全体の現象なので変えるのは難しいですが、
『会葬行為の充実を見直す』ということは、葬儀社側から変えやすいかもしれません。
例えば、メモリアルコーナーを充実させたり、
故人の人となりを個々に偲べる空間作りへの工夫。
最近聞いた話では、お別れの際に会葬者に手紙のようなものを書かせて、
棺に入れることを研究している葬儀社もあるようです。
この場合の大きな障害は、一般紙を大量に燃やすと灰が出て遺骨に被る…
ということなので、今は灰の出ない紙を探しているようです。
この試み自体が成功するかどうかはわかりませんが、
その姿勢が、結果的に会葬の価値、葬儀の価値を高めることは感じられます。
さて、話が戻って②。
今までの葬儀ビジネスは、会葬者に客単価を頼ってきたということは、
葬儀に携わっている者は容易に感じることです。
葬儀料金の内訳の中でも、利益率の高い分野は「食事」と「返礼品」だと思います。
会葬者が減れば、それら利益率の高い商品も数が出ない。
結果として会葬者が減れば1件あたりの葬儀単価が減る…
会葬者が減っている現状を、嘆かざるえないということになります。
もちろん、食事や返礼品を充実させることは大切だと思います。
利益率の高い分野に力を入れるというのは、普通です。
著名な家族葬コンサルタントも「次は食事だよ」と去年から仰っていましたし、
また今度会ったときには「次は返礼品だね」と仰るかもしれません。
ただその前に、会葬者が減っている状況が経営に打撃を与えるのなら、
葬儀社としては会葬者に依存しないビジネスモデルを
考える必要があるのではないでしょうか。
現状の葬儀の流れのままで食事や返礼品を考えても、
会葬者が減れば、その努力も比例的に価値が減ります。
会葬者が増えれば、もしくは維持できれば良いでしょう。
しかし、人と人との繋がりが益々薄くなっています。
会葬という行為自体の改善を図っても、
社会全体の傾向を動かすことは容易ではないく、会葬者は増えない可能性もあります。
その場合は、会葬者の数に依存せず利益が出せる葬儀を準備する必要があります。
つまり、大まかに「祭壇料」と呼ばれている部分で、
利益を上げられるビジネスモデルが必要になると思います。
葬儀の売り上げを祭壇料、食事、返礼品と分ける場合は、
祭壇料には、メモリアルコーナーや式場演出(生演奏やDVD映像)なども、
含まれると思います。
例えばの話ですが…
「『家族葬』が希望です」
そういう希望の御遺族がいるとしましょう。
その場合は、「安いに葬儀なるのかな」と思わずに、
「『家族葬』にしましょう。ご希望はありませんか?
ご家族の想いを形にする○○という演出も、弊社では出来ます。
(さらに…)家族葬では、諸所の課題が残る場合があります。
数々の葬儀を施行した私たちから見ると、
特に○○という問題が後々起こるケースが多いようです。
弊社ではこういう解決を準備しておりますので、
ご要望がありましたら連絡ください。」
といった形で、サービスの選択肢を広げ、積極的に価値のある葬儀を提供する姿勢が、
いわゆる「祭壇料」の売り上げアップにつながると思います。
前述の【会葬者にお手紙を書いてもらい棺に入れることも出来ますよ】というサービスも、
顧客の価値に合えば売り上げを上げることができるでしょう。
葬儀において顧客が感じる満足や価値は、各遺族によって違うでしょうから、
一概にこのサービスを準備していれば問題ないということは無いと思います。
ただ、顧客の要望に応える選択肢を数多く持つことが、
経費を削減せずに利益を上げられるには、何より重要かと思います。
特に纏まらずにツラツラと書きましたが、
『会葬行為の充実を見直す』
『葬儀のサービスの選択肢を持つ』
この2点が、今のところのポイントになるのかなと、
近隣の葬儀社さんと話をしていて、考える次第です。