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2008年05月19日

両親のIターン その3(加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

GWは、夫と二人、私の実家の片付けに向かいました。
庭にはこの季節、勿忘草が一面に咲いていました。
私と結婚した時に、東京生まれの江戸っ子である夫が、
何よりも喜んだことは「田舎」が出来たことでした。
夫は、山あり、海ありの茨城県をこよなく愛してくれました。
私にとっては別に普通の風景も、夫にとっては「心のふるさと」と感じたようです。
確かに、息子達が生まれて里帰りするたびに、
私自身も「茨城県は、いいところだなあ・・・」と実感したものです。
海水浴をした大洗海岸、北茨城の美味しい魚、千代田村の梨狩り、
大子温泉、袋田の滝、りんご園、里美村でのキャンプ、筑波山登山、
ひたち海浜公園には、何度出かけたか・・・。
季節の果物、乾燥芋・・・美味しいものもたくさんある、茨城県です。
子供たちの思い出の中にも、多くの風景が残されていることでしょう。
その故郷を両親が去ろうとしています。


これから引越しの日までに大変なのが、家の片付けです。
簡単に言えば、一軒分の家財道具を2DK程度のマンション分に減らすわけです。
何せ、捨てるのが嫌いな父と、変に思いっきりのいい母。
私は長年その二人の戦いを見てきました。
母は早合点で、父が必要とするものを度々捨ててしまった経験があります。
庭に植えたばかりの花を、草と勘違いして抜いてしまったり・・・。
大切な書類をちり紙交換に出したり・・・数えたらキリが無い位・・・。
そんな父の苦労も見てきました。
そんな二人が、引越しの準備を始めました。
なかなか進まないのは、誰もが予想した通りです。
母の性格も分かりますので「父に内緒で、何もかも捨てていい」
とまでは言い切れません。
電話をかけてきては、私に愚痴る母と父・・・。

「とにかく、5年も10年も着ていない洋服や、とっくの昔に退職した
NTTの頃のものは、もういらないかもねえ・・・」父は、
会社勤めの頃の名簿や訓練用の作業着など・・・ナンもかんでも取っておく性格です。
それが又、母の大きなストレスでもあります。
何年も使わなくなった、アマチュア無線の機械等など・・・・。
母にとってはガラクタ同然のものかもしれませんが、父にとっては大切な品物・・・。
父の気持ちも分かります。
母の気持ちも分かります。
いきなり何もかもを捨ててしまうことは決して出来ません。
少しずつ、少しずつです。

母には、3つに分けることを提案しました。
まずはこれから先に、絶対に使うもの・絶対に使わないもの・どちらか分からないもの。
この3つです。
母は、母なりに分別をしながらこの数日を過ごしてきたようです。
そしてGWに、私は初めて母と片付けに臨みました。
実家は狭い家ですが、3部屋とリビングと台所があります。
この家に、これだけの物があるのか・・・と思う位、出てきました。
部屋の中は、いつもは片付いている方です。
しかし、押入れや棚、タンス、引き出し、外にある物置・・・出てくる出てくる。
一つの部屋で、一つの場所を片付けていると、思い出話が始まり、
次から次へと話が進み「そういえば、ここにこんなものが入っている」と、
隣の部屋、又、その隣・・・と、広がってしまいます。
私も一緒に思い出に浸ります。

いつの間にか、家中が散らかりました。
「ああ・・・これじゃ、どうなることか・・・」と先が思いやられます。
でも、これが又、両親や私、そして夫にとっての「お別れの儀式」だと思っています。
少しずつ、少しずつ、この家とお別れをするための、
通らなければいけないプロセスなのです。
もうしばらくこんな日々が続くでしょう。
これはとても大事なことであり、この作業は、家族にとって、
とても必要なことであると感じています。

父は、若い頃から写真が好きで、写真館に就職したことがあります。
その後電々公社に再就職しましたが、それ以降もカメラは大好きです。
私達が幼い頃は、モノクロの写真を自分で引き伸ばして、現像してくれました。
今でもたくさんの写真が残っています。
働いていた頃から買い貯めたらしく、大切に保管されていたカメラが、
私たちの目の前に並べられました。
「ええっ!こんなに?!」と、驚きましたが・・・。
父はそのカメラの大切な二つだけ、手元に残して、
あとは全部、ナンと夫にプレゼントしてくれました。
喜んだのはカメラ好きな夫です。
しかし私は複雑です。
だって、片付けに来たのに、いらなくなったものをもらって行くということは、
今度は我が家のモノが増えるということですもの・・・。
でも、思い出の品物として大切にしなければいけません。

押入れの中から、私が小学校に入学した時の、道具入れの袋が出てきました。
私もとっても気に入っていた、母の手作りのアップリケのついた袋です。
何回も持ち手の所が切れて、修繕を繰り返しました。
母も「これは捨てられなかった」と言っています。
私や兄が子供の頃のものは、それぞれが結婚した時に、
持って出たか片付けたかで、ほとんど実家には残っていません。
でもこんなものが出てくると、懐かしいやら、うれしいやら、寂しいやら・・・。

こうして私達家族の思い出をもう一度ここで、しっかりと振り返りながら、
承認しながら、次の家族の形へと変わって行こうとしています。
片付けとの戦いは、まだまだ続くでしょう。
両親と一緒に、楽しんで続けて行くつもりです。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2008年05月19日 09:00

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