ご依頼が来て早速仕事に取り掛かったのは、ナレーション作りです。
FUNETを開いて故人の情報を入れます。
季節感を取り入れながら、
人柄の温かさなども際立たせたナレーションが出来上がりました。
そこに経営者として成したことや、広い趣味の中からの言葉を入れて出来上がり。
それから、私は言葉の表現を自分らしい形に整えます。
今回は、社葬形式ですが、限りなく個人葬に近い形でした。
会社関係の方々が、故人とは非常に近い位置にいらしたのでしょう。
葬儀社の担当者さんからも、
全体的に「あまり仰々しくしないで欲しい」というご依頼をいただいておりました。
「どういう葬儀にしたいのか」という情報は非常に大切です。
その点をはっきり伝えてくださる葬儀社様は、司会者としてとても有難いことです。
喪家や会社と葬儀社側が、きちんと意思の疎通がなされているということでしょう。
「自然な言葉の表現を求めている」ということが分かれば、
そのような文章になりますし、また、そのような喋り方にもなります。
一方で、久し振りの司会ということで準備が大変でした。
当時の声の出し方は、研修講師の声の出し方になってしまっていて、
葬儀司会の声の出し方と違っていたからです。
声のトーンは完全に上がっていました…。
接遇セミナーの仕事と葬儀司会は、喋り方は180度違います。
セミナー時はトーンは高いですし、リズムもテンポも早いです。
今回の司会の仕事が決まってから、毎日、ボイストレーニングをしました。
ゆっくりとした活舌、低い声のトーン、特に母音を深く喋ることに努力しました。
葬儀のナレーションを喋る時の顔の表情筋は、非常に大切です。
ナレーションを話すには、口周りの筋肉を柔かい状態にすることが必要です。
そこから深い言葉が生まれてきます。
仕上げには私が作曲した葬送BGMを使い、その雰囲気を作り上げて行きました。
音楽葬では、遺族側から「クラシックを中心に」というご依頼をいただきました。
曲目については、一任されていました。
クラシックであっても、充分に著作権を調べる必要があります。
実際にはご遺骨の入退場があったので、それはメインの曲として特別に配慮しました。
あるオペラの間奏曲でメロディの終わりに従い、メロディが高揚して行く曲想のものです。
今回の社葬は、故人はすでに遺骨になっていましたし、
葬送行進曲のような重い曲は似合わないと感じていました。
それに引き換えこの間奏曲は、
まるで魂が天国へ昇って行くようなメロディが繰り返されて、
遺骨の入退場にはピッタリです。現場でのリハーサルで流してみて確信を得ました。
そして、故人ナレーションの際には、綜合ユニコム株式会社から販売している、
<ピアノ葬送BGM・希望のうた>から「木漏れ日」を使いました。
嬉しかったのは、
ご遺族に「あのピアノの曲がすごく良かった」と言っていただいたことです。
私が作ったということには触れませんでしたが、心から感激しました。
「ありがとうございます」
社葬の司会をすることで、接遇講師としての大きな発見もありました。
葬儀全体のスタッフの動き作りです。
司会台に立つと、周りのスタッフの動きが手に取るように見えます。
自分の言葉のタイミングでスタッフにどう動いて欲しいのかが、
良くも悪くも見えたのです。
これは、接遇セミナーでも触れて行くべき重要な課題です。
葬儀接遇の動きとは、行き当たりばったりの出たとこ勝負ではありません。
そこには必ず計算された動きがあります。
言葉と動きの連携が整えば、見た目にも素晴らしい葬儀になります。
故人様のご冥福を心からお祈りいたします。
司会をさせていただき、ありがとうございました。
合掌