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2009年05月18日

「おくりびと」に思う (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

第81回アカデミー賞外国語映画賞受賞映画「おくりびと」の影響で、
納棺業務に携わる業界の認知度が上がり、
依頼や問い合わせなども急増、活性化されているらしい。
映画のヒットで、その業界の仕事振りに関心が集り、
一般の人々に広く認知されるのは好ましいことである。
また誰にでも出来る仕事ではないのに、働きたいという問い合わせも多いと聞く。
やりがいもあるだろうけど、失敗の許されない、精神的にタフな仕事であるのにだ。
それはもうこの映画のお陰で、葬祭業界に充分貢献してもらったことは間違いない。

別に映画を否定するわけではないが、少しだけ意見を述べさせていただこう。
映画は、どこまでいっても映画である。
一般の人々なら分かるが、業界の人達はもっと冷静にならないといけない。
映画では描かれていない部分も多く、逆に言えば映画作りに適さない部分も多いから。
湯灌による細菌の増殖や感染症に対する予防などが、この映画には皆無だ。
もちろん目的が違うのだから、映画で観せるはずもないだろう。
全ては「様式美」という古風でどこか美しい言葉に凝縮されていたように思う。
正直、昔からありそうな伝統だろうが、納棺が美しくなったのは最近のことだ。
映画で見せた「様式美」は、最近作られた「様式美」という美しさであり、
言葉のイメージに騙されてはいけない。
ともあれ、世界に向けて日本の映画、
ひいては納棺の仕事振りが紹介されたのは驚きだ。
賞賛に値するのは間違いない。

死体を一番多く扱うのは警察であろう。
警察官に「もっとも辛い仕事は?」と聞くと、死体処理と答える人が多い。
いつも穏やかな死体ばかりではない。
バラバラに切断されていたり、一部だけが見つかったり、あるいは腐乱していたり。
警察官にとって厳しい仕事であるから手当てが出るらしい。
噂では、都心部で千円前後が普通死体、腐乱死体はその倍だとか。
「おくりびと」でのワンシーンで、新人のもッ君(喪ッ君・・・笑)が50万の手取り・・・
そのとき頭を過ぎったのが警察の死体処理の話でした。

映画ついでにいえば、刑事が登場する場面で、
「誘拐犯からの電話だ、逆探知するからなるべく長く・・・」
なんてシーンがあるけど、現在のデジタル交換機だと着信履歴と一緒で、
たとえ非通知であったとしても逆探知するのに一秒程度らしい。
逆探知を恐れる犯人が、場所を変えあちこちの公衆電話から掛けてきても一緒。
電話会社は各公衆電話の番号を把握しています。
こんなこと言っていたら、映画観ていてもつまらないけどね。

最後に、4月22日の毎日新聞によると、「おくりびと」指導の葬祭会社摘発。
廃棄物処理法の違反容疑で書類送検・・・そりぁないだろう。
現実世界では、「様式美」より「コンプライアンス」の方が重要だ。

映画は映画として、あんまり振り回されないようにしましょう。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2009年05月18日 09:00

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