松茸にも代表されるように、日本人は香りを重宝する人種のようです。
日本の宝物が納められている東大寺正倉院宝物の中には、
長さが156cmもある巨大な香木、「黄熟香」があります。
9世紀頃に中国から伝来されたと言われる「黄熟香」は、
足利義政、織田信長…といった時の権力者たちが、
断片を切り取り、香を味わったそうです。
権力の一つの形として、香木の香りというのもあったのでしょう。
葬儀においても、香りは大切にされてきました。
「香典」、「焼香」、「線香」など、香りに関係する言葉は多くあります。
「香典」は、そもそも「香りを供える」という意味を含んでいます。
今は、相互扶助の意味合いが強いですけどね。
1930年前後までは、ドライアイスを大量生産する会社がありませんでした。
(日本では、日本ドライアイス株式会社が、
最初にドライアイスを工業化したとされています)
それ以前は、死者の腐敗に伴って臭いもするので、
お香を焚いて紛らわせていたようです。
「香を焚いて匂いを紛らわす」という考え方は、
平安時代から既に続いていたと考えられます。
源氏物語に代表される十二単はなかなか洗濯できません。
(トイレに行くのも大変そうです!)
そこで、部屋にお香を焚いて、
服についた臭いを紛らわせるという方法がとられていたようです。
そのような時代に、前述の「黄熟香」は中国から送られてきたので、
憧れの存在だったのでしょうね。
ちなみに、「黄熟香」は「沈香」といわれる種類の香木です。
線香の原材料で使われる香木は、主に沈香と白檀ですので、
日々線香の香りを堪能している葬儀業界の人は、
香りに関しては贅沢しているかもしれません。
また、香りは英語で「Perfume」と書きます。
単語を分解すると「Per(throught)+fume(煙)」です。
「煙を通して」という意味になります。
人が香りに接した方法は、香木に火をつけたことによると、
英語の語源にも表しているそうです。
インドでは、香木で火葬するのが一般的と言います。
釈尊も、弟子たちが持ち寄った香木を積み、荼毘に付されたそうです。
日本では、火葬の場面で香木を使うことは滅多ないでしょう。
「火葬の本質は、その火や煙を見ること」と、Y先生から聞いたことがあります。
インドでは、それに加えて「その香りを嗅ぐこと」も含まれるのかもしれません。