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2010年04月05日

「ん」の音 (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

東京の山手線に乗ると、都内一周の29の駅が楕円を描いて表示され、
車両の中で少し顔を上げればドアの真上に見える。
現在は何処の地点を走っていて、目的の駅までの所要時間が分かるのだ。
そして駅名は、漢字表記とローマ字表記が交互に繰り返されているのは外国人のためか。

東京駅の近くに新橋という駅があるけど、ローマ字表記でこう書いてある。
<shimbashi>
<shinbashi>ではないのだ。
アレレっ、何だかピンとこない。
因みに新宿は<shinjuku>、神田は<kanda>、新大久保<Shin-Ōkubo>である。
山手線の駅ではないが、日本橋は<nihombashi>だ。
<n>と<m>の違いは何故?
何やら色々と知らなきゃならないことがありそうだ。
以前から気にはなっていたが、
<si>と<shi>の違いや<ti>と<chi>はどう違うのだろう。
私はローマ字のルールを知らない・・・学ばなければ。

ローマ字には日本式ローマ字である「訓令式」と呼ばれるものと、
英語式ローマ字である「ヘボン式」の二種類があるのだ。
私が小学校で習ったのは「訓令式」なのだが、
パスポートで使うのは「ヘボン式」でなくてはならない。
パソコンではどちらでも変換してくれるらしいのだが、
私は日本語(ひらがな)入力だから一切関係ない。
「訓令式」と「ヘボン式」には、どちらも一長一短がある。
「訓令式」は体系的でスペルが分かりやすく日本人向き。
「ヘボン式」は日本語の発音とマッチするように作られた表記法だが、
日本人には・・・特にお年寄りには・・・不向きであるだろう。
しかし、ローマ字表記は日本人だけのものではないので、
戦後、JRの駅名を始めとして徐々に普及したらしい。
それが上記の<si>と<shi>の違いや<ti>と<chi>である。
(訓令式とヘボン式)

ふむふむ、よく分かってきたぞ。
ローマ字の世界にも歴史があるのだ。
我々日本人は<si>と表記されていても自然に<シ>と発音するが、
外国の方から見れば<si>と表記があれば<スィ>となる。
だから日本人の発音を基準に考えたらヘボン式の<shi>になるというわけだ。

では新橋や日本橋の「ん」部分は、どうしてローマ字表記だと<m>になるのか。
新宿や新大久保の「ん」の部分は<n>の表記なのに。
調べてみても昔のヘボン式だとか修正ヘボン式だとか
ごちゃごちゃ出てきて分かりにくいが、要するに<n>が、
<b>,<m>,<p>の音に続く場合は、<m>表記にするのがあちらの常識らしい。
(あちらって・・・どちらよ)
例えば「参拝」は<sampai>、「念仏」は<nembutsu>、「万物」は<bambutsu>
「輪番」は<rimban>、「環八」は<kampachi>、「三杯酢漬」は<sambaizuke>
「がんもどき」は<gammodoki>、「近辺」は<kimpen>となる。
こういうルールだってこと全く知らなかった。
だって日本人は、全く困らないもの。
外人にとって「n」を発音するのが、そんなに苦労するとわね。

尚且つ、日本語の「ん」の歴史は相当浅いらしい。
そういえば五十音図でも一つだけ、ポツンと外側にあるもんね。
(何となく気になっていたんだ)
母音でも子音でもない音になるのだろうが、どういう扱い?

どうやら「ん」という撥音(はつおん・はねる音)は、
口を閉じたまま鼻から息を抜くような音で、
古来より文字にあらわす事は勿論下品とされてきたし、
貴族社会からしてみれば、音としては最も嫌がられたようである。
本居宣長は、上古の時代には「ん」は存在しなかったと断言しているぐらいで、
江戸時代以降、庶民文化が花開くことによって市民権を得たようである。

してみれば、「ん」の歴史は、葬儀社の歴史と似ているのかもしれない。
(案外、伝統がないというか、浅いのだ)

<追記>
浄土真宗本願寺派のお経の読誦方法に、撥音「ん」に対する発声方法が二通り。
あったような気がするが、当時は覚えるのに必死でそこまでの余裕がない。
時期を見て、教学伝道部に質問してみようと思う。
何でも勉強だね。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2010年04月05日 09:00

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