話の筋としては、妻夫木聡が演じる若い男の逃亡劇です。
彼自身、殺人を犯して逃亡しているので「悪人」なのですが、
彼の周りの人間の「悪性」に関しても描かれている作品でした。
深津絵里はもちろん、被害者の父親役の柄本明、
加害者の母親役の樹木希林の演技が光っていました。
人の死を中心に作品を描くと、
その対象として生がテーマとして見えてきます。
同様に、この作品では人の悪を中心に描くことで、
対象として善の部分が表出していたように感じます。
表現するとは、そういうことなのでしょうね。
なので、「悪人」というタイトルでも、
鑑賞後はどこかスッキリした感覚です。
また、殺された娘を想う父の心情を柄本明が丁寧に演じており、
生死を基にした感情の揺れる部分も描かれているので、
泣ける場面もいくつかあります。
特に、最後は深津絵里の演技だけで、感情が揺さぶられそうになります。
最優秀女優賞を獲得できたのも納得です。
今後の映画賞の受賞次第では、
「おくりびと」のようなヒットに恵まれるかもしれませんね。
ということで、久しぶりにおススメ映画の紹介でした。
そうそう、映画の内容とは別に楽しみだったことが一つありまして…。
この映画で、いつもお世話になっているTホール様がロケ地になっていたことです。
シーンとしては、被害女性の通夜の場面、
特に通夜振舞いの様子が撮影されていました。
なかなか素晴らしいことです。
祭壇の荘厳も、自然に作品に溶け込んでいました。
柄本明演じる、被害女性の父親の揺れる心情が描かれた重要なシーンで、
もっと長く見ていたくなる場面でした(葬祭関係者だから、尚更ですね)。
エンドロールとパンフレットにクレジットが載っていましたが、
協力する方も大変だったと思います。お疲れ様でした。
多くの方に、是非観ていただければと思います。
封切られてから間もないので、まだまだ多くの地域で公開されていることでしょう。