遺族がこのような場所へ行くには、心の準備が必要です。
亡くしてすぐに招待されたら、多分行けなかったと思います。
死後4か月位までは、私たちにとって父の死は特別なもので、
他人と合同で何かをしたいとは思いもしませんでした。
でも日にちが過ぎる内に、少しずつ気持ちの区切りが出来ていったようです。
当日は、病院の隣にある教会で、119人の亡き人々を記念しました。
参加した遺族は極一部の方でしたが、そのどなたも、
ふっきれたような晴れやかなお顔をしていたような気がしました。
母は父の遺影を大事に抱えて祭壇に置きました。
この遺影は、父の葬儀の時に私のリクエストで弊社の工場長が作ってくれた、
横版の遺影を縮小したものです。
葬儀は無宗教葬でしたので、父の遺影をおしゃれにしたかったのです。
横版の遺影は他の遺族には無くて、とても目立っていました。
作る時には、工場長は大変だったと聞きました。
でもこの遺影に私たちは大満足しています。
この気持ちは悲しみを癒す大きな力になりました。「ありがとう、工場長!」
この病院での父との最後の日々は、ホスピタリティにあふれた時間でした。
私たち遺族は、その日々を暖かいなつかしい気持ちで振り返ることが出来ます。
だからこそ、こうして父の死後も看取った病院に帰って行けるのでしょう。
葬儀社でもお客様のアフターサービスに、
「思い出の会」を開催する所が増えています。
アフターサービスでお客様を喜ばせるには、
まずはそれ以前の葬儀全体で喜んでいただくことが先決です。
お客様は、葬儀の今を満足することなくして、
その先の満足は無いということだと思います。
父の「昇天会」を終えてまた一つ心の区切りが着きました。
多分、季節を一めぐりするまでは、なかなか元のようにはなれないと思います。
今、日々の中で少しずつ悲しみを癒している私たち遺族です。