改めて葬儀の価値を考えてみると、
「お別れまでの時間作り」は、葬儀の一つの役割ではないでしょうか。
かつては「殯(モガリ)」という儀式で、
死者に食事を供し、死を嘆き、長い時間を掛けて死者の霊を慰めたそうです。
時間を掛けて死者の死を確認し、受け入れるというプロセスは、
遺族の悲嘆を癒す一つの役割になっていたことでしょう。
現代の葬儀は、その死が突然やってくるとは言え、
葬儀の打ち合わせやお金の工面などで慌ただしい面もあると言えます。
かえってそれが良いと言う人もいるかもしれません。
一方で、お別れまで(火葬まで)の時間は限られているけど、
それまでの期間は静かに死者と向き合いたいと思う人も多いと思います。
私も、どちらかというと後者の人間です。
田舎では、今も隣組や町内会の人などが打ち合わせの間に入って、
葬儀を施行するまでの煩雑な業務や進行をある程度代行してくれる、
纏めてくれる地域もあると思います。
遺族が施行の準備から一部解放される点は良い面でしょうが、
隣組や町内会の人と意見が合わなかったり、要望通りに進まなかったりして、
大変な思いをする遺族もいるかもしれません。
隣組や町内会の人は、サービス業では無いですからね。
一方、地縁が薄い都会では、
葬儀の内容を喪主や遺族が自らプランを選択し、
細かなオプションも決めていく必要があるでしょう。
慣れない葬儀の打ち合わせでも、
短い時間で内容を決めていかなければならない。
しかも慎重に、というのは心理的にも負担があると思います。
また葬儀の打ち合わせに時間を掛ける分、
故人とのお別れに掛ける時間が、削られてしまいます。
葬儀で喪主や遺族に、故人と向き合う時間をしっかり取ってもらう。
そのためには、葬儀の事前相談が有効な方法ではないでしょうか。
葬儀で慌てないために、予め準備をしておく。
葬儀の概要や予算を知り、葬儀のイメージを持ってもらう。
施行をお願いしたい葬儀社のことを事前に知り、
信頼できそうな葬儀社の選択肢を何社か持っておく。
そうすることで、喪主や遺族は、いざ葬儀という時に、
時間的にも気持ち的にも余裕が生まれるでしょう。
遺族のために葬儀の事前相談があると考えると、
葬儀社の事前相談の門戸はもっと開かれて良いと思います。
また、葬儀社に相談する時間がないという方のためには、
電話、もしくはインターネットで代替になるような、
相談しやすい窓口があっても良いのではないでしょうか。
そんなことを、ふと考えた次第です。