「サービス業」と「宗教行為」は、背反するものではありません。
ただ、生きている人の中で誰を一番に見るのか・・・という点では違ってきます。
「サービス業」なら遺族、「宗教行為」なら宗教者となるでしょう。
葬儀の席で、この両者が対立することが無ければ良いですが・・・
「故人中心」主義が謳われるのも、いざ争いが起こった時の予防線かもしれません。
現在の仏式葬儀で難しい点は、
一般の日常生活から仏教の影響が希薄になっていることに依るでしょう。
宗教と生活は、背反するものではありません。むしろ密接に関係しているものです。
しかし、現代では生活から宗教が離れている人が増加している。
私たちより下のインターネット世代(30代以下)だと、
特に宗教離れが激しいかもしれません。
(先日CNNでは、アメリカの若者の宗教離れの記事が出ていました。)
宗教だけでなく、コミュニティ(地域)や政党に属さない、
「集団」から「個」への流れが、社会に広がっています。
個性が大切にされ、一人ひとりの価値観が尊重される世代です。
結婚式など見ていると、これからの葬儀の「多様化」が感じ取れる気がします。
今ある「形式」が、急激に変わることは考えにくいですけどね・・・。
若い人が、日常生活の中で宗教行為を行う時間は僅かです。ほとんど有りません。
じいちゃん・ばあちゃんの家では仏壇や神棚があることが一般的ですが、
若い世代の家やマンションでは仏壇が有る方が珍しいです。
私を含むほとんどの30代以下の世代は、宗教性に乏しい日常生活を送っています。
そのような環境の中で、葬儀になると急に宗教的な要素が高まるから、
何か「違和感」を感じるのかもしれません。
若い世代だけではなく、私たちより上の世代においても、
葬儀に「違和感」を感じている方は増えているのではないでしょうか。
そのような「違和感」の現れが、宗教にとらわれない「お別れ会」や、
仏式でも会葬者を限定した「家族葬」の増加に現れているかもしれません。
いわゆる一般的な葬儀においても、「司会ナレーション」、「思い出ビデオ」、
「オリジナル会葬礼状」など、「故人らしさ」や「個々の故人の生活」を反映した
葬儀のオプションに注目が集まり、ニーズが高まっています。
それらの商品に、宗教性が入ることは少ないです。
多くの人が、葬儀は仏教が支配するものではなく、
亡くなった方やその周囲の方々中心に行われるものと感じている・・・と、
私は考えています。
全体的には、「サービス業」と「宗教行為」のバランスが、
より「サービス業」に傾いてくるのではないでしょうか。
個人的に仏教を否定したい訳ではありません。
長い年月、葬儀の「型」を作ってくれたのは仏教の貢献が大です。
悲嘆にくれる遺族にとって、ある程度の形がある葬儀の方が楽でしょう。
死に関する様々なことを、仏教は長年サポートし、背負ってきてくれました。
一方で、普段の生活から仏教が離れてしまい、
葬儀のみ幅を利かせているように見られるのは、残念でなりません。
葬儀は、これからも個々の生活に密着したものになるでしょう。
そして仏教が日常生活に浸透していない世代が増してくると、
より今の葬儀の「型」とのギャップが生まれてくるでしょう。
昨今、仏式葬儀が9割を切ったと言われています。
今のまま時代が流れれば、仏式葬儀はもっと減少するでしょう。
感覚的に、全く違和感のない予想です。
ふり返って見ると、私の友人の結婚式は人前式が多かった。
(私は、よくあるキリスト教式でしたけどね)
葬儀でも、人全式に似た形式が出てくるかもしれません。
(私は、一般的な仏式になりそうですが)
個々の生活に合った、違和感のない葬儀が施行されるのが自然でしょう。
その流れは、これからも続くと考えています。