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2012年12月07日

イギリス視察余談② (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

遠くから霧笛が聞こえる。まだボーとした輪郭の中、
やがてタバコに火を付ける男のアップが映りだす。
一口目を深く吸い込み、画面一杯にプッーと吹き出す、背景は霧のロンドン。


霧のロンドンといえば、何だか大人のカッコ良さのジャンルに入れてきた私。
どことなく渋いし、ダンディのような、それでいて<ちょい悪>。
ところが、イギリスで話を聞いてオッたまげた。
ロンドンは濃い霧が発生することで知られているそうだ、特に冬場は有名らしい。
映画で作られた私のイメージの世界とはどうも違う。
濃い霧…これは大気汚染の一つで19世紀の産業革命以降、
石炭の利用により、燃やした後の煙や煤が霧に混じって地表に滞留し、
スモッグと呼ばれる現象を起こすようになった。
つまり、呼吸器疾患などの多くの健康被害を出すことになったのだ。

具体例で有名な話がある。
1952年の冬、5日間ほど上空を高気圧に覆われたイギリス。
ロンドンを猛烈な寒さが襲う。
ロンドン市民は通常より多くの石炭を暖炉に使った。
この時発生した濃いスモッグは、前方が見えないほど酷く、工場では作業中止。
コンサート会場や映画館は、舞台が見えない、スクリーンが見えない、との理由で中止。
多くの市民の家にもスモッグは侵入し、目や喉を傷め、
咳が止まらなくなるなどの症状に襲われた。
この大スモッグの翌週まで、病院は大混雑、次々に患者が運び込まれた。
この冬、通常よりも4000人余り死亡者が多かったという。
さらに被害は拡大して、その後の数週間、約8000人が死亡した。

この衝撃的な結末に、ロンドン市民はすぐに対応せざるを得なかった。
暖炉の煤(すす)や排煙を出す燃料を禁じることが決まった。
工場についても排煙の規制が進んだ。
霧のロンドンは、昔の話だ。
日本での大気汚染経験は、明治時代の殖産興業政策時代に端を発しているが、
本格的には第二次世界大戦後の他国では類を見ない高度成長期に体験する。
大気汚染に関しては、イギリスは日本より20年進んでいる。
ではまた。

<追記>
「ノッティングヒルの恋人」という映画をご存じだろうか。
ヒュー・グラントとジュリア・ロバーツのラブ・ストーリーである。
ロンドン西部のノッティングヒルにある書店が舞台だ。
現地案内のガイドがバスの中でこう云った。
「監督の自宅を映画で使ったが、あまりに人気が出て現在は売り払ってしまったと」
しかし、これは間違っているのではないかな。
この自宅は、映画の監督ロジャー・ミッシェルのものではなく、
脚本家のリチャード・カーティスの自宅だ。
売り払ったのも、当然リチャード・カーティスである。
ガイドの説明は、当たらずとも遠からずではあるが、
これは勘違いだなあ…と思いつつ、面白い話もしてくれました。
ケンジントン公園の人口の湖から、永遠に大人にならない少年の物語「ピーターパン」
という幻想劇を創造したイギリスの劇作家ジェームズ・M・バリー。
彼は石工の子として生を受け、最終的にはエディンバラ大学の学長にまでなっている。
現地ガイドは、興味深い話を良くしてくれるし退屈しなくてありがたい。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2012年12月07日 08:30

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