現在、数学の教諭をしている「Sパン(バレバレ)」が県の代表として、
東京で開催される全国のある会合に出て来ているらしい。
ならばと、早速連絡を取り、待ち合わせて一緒に飲んだ。
が、いつも大勢仲間がいたから二人だけで呑んだことは一度もなかった。
今回、初めて聞く話も多く感慨深かった。
彼とはクラスこそ一緒になったことはないが、家も近かったし野球部も同じだったから
いつまで経っても縁が切れるとは思っていない。
「Sパン(バレバレ)」は、なかなか面白い奴で、
その面白さの裏には、彼の異常に明晰な記憶力がある。
例えば、中学時代の野球の試合での詳細を憶えている。
試合後にB先輩が、バット3本を右手で肩から抱え、左手一本で自転車に跨り
キャンディーズの「やさしい悪魔」を口ずさみながら帰って行ったが、
その歌が音程を外れていた…なんてどうでもいいことをレポートするのが特に巧い。
日常生活でも、こいつ、将来喋ろうとして意識して覚えていたのではないか、
とさえ思えるような些細なことになればなるほど記憶しているのだ。
この辺の拘りは、誰も知らないフランス映画の脇役の名前やスタッフの名前まで知って
得意げに喋っている江本明さんと同じようなものだ…絶対に意識して憶えている。
また「井手一男」と「検便」を巧みに合わせたオリジナル曲を流行らせたり、
といっても我が野球部だけの話ではあるが…全員で合唱された日には適わない。
酒を酌み交わしながら、ひとしきり青春時代にタイムスリップする。
独身の彼は、老いた父親と同居していて誰にでもある悩みを抱えているし、
訪れた病院で昔の同級生に会い、その親子の様子を見て
「お前も同じ境遇か…」と思ったりもするようだ。
つまり、どこにでも居る50代の男である。
人は、感性はあまり変わらず大人になるものなのか、
今でもその面白さは変わらないが、今回の東京出張は
生徒の「しょうがい(障害・障碍・障礙)」について
教諭の立場から発言しなければならず、彼なりにとても悩んでいた。
私でさえ「しょうがい」とひらがな表記を薦める話や、
当用漢字に「碍」・「礙」を入れろという動きがあることも知っている。
一般的に使う「障害」という文字の「害」という字が問題の多くを表している。
お釈迦様が漸く生まれた我が子に「障碍」という意味の名前を付けたのは有名だ。
酒の席ではあるが、色々な立場の方が居て、色々な意見があり…ホント難しい。
「しょうがい」の話だけで1時間近くは喋っただろう。
学校の先生も大変だな、と思った。
最後は、頑張れ「Sパン(バレバレ)」と意味もなく応援した。
立場が異なる者としては、古くからの友人を励ますことしかできない。
大人になると、大変なんだなあ。
だからこそ、余計に中学時代が輝いてる。
因みに、興味深いつぶやきもあります。
「つぶやきかさこ」