エボラ出血熱で世界が騒然としている中、ニュースでも[エボラ出血熱]は一類感染症であることはもうご存知だと思います。
そこで、エボラを含む、一類感染症の具体的な症状などをまとめてみました。
葬祭ディレクター試験では一類・二類・三類・四類と丸暗記が必須なので
こうして取り上げてみると覚えやすいかもしれません。
まず一類感染症 [エボラ出血熱][クリミア・コンゴ出血熱] [痘そう][南米出血熱][ペスト]
[マールブルグ熱][ラッサ熱] は
感染力、罹患(りかん)した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症であり、主な処置は原則入院・消毒等の対物措置
(例外的に、建物への措置、通行制限等の措置も適応対象とする)とあります。
エボラ出血熱
潜伏期間は2〜21日です。血液を介するエボラウイルスの感染力は強く、針刺し事故ではほぼ100%の確率で感染すると考えられています。症状は、発熱、悪寒(おかん)、頭痛、筋肉痛、吐き気・嘔吐、胸痛、腹痛、咽頭痛(いんとうつう)、下痢、紫斑、吐血、下血、意識障害などです。死亡率は50〜90%です。
「このウイルスは体内の血液を凝固する能力に異常を引き起こします」(バデリア博士)。
出血性の症状が見られない患者にも血管からの出血がおこるようになり、出血性ショックから次第に死に至る。
クリミア・コンゴ出血熱
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによりもたらされるウイルス性出血熱。ダニが媒介となり人畜に感染する。ヒトからヒトへも感染する。
クリミア・コンゴ出血熱の潜伏期間は2日~9日程度で、発症すると高熱、身体各所の痛みなどがあらわれる。重症化すると死亡するおそれがある。
クリミア・コンゴ出血熱は、エボラ出血熱、ラッサ熱、マールブルグ出血熱と共に、ウイルス性出血熱として定義されている。致死性はエボラ出血熱とラッサ熱が高く、感染例はラッサ熱とクリミア・コンゴ出血熱が多い。
痘そう
痘そうに感染すると、7~17日間の潜伏期間を経て発症します。発症初期には40度C前後のインフルエンザ様の高熱と頭痛や腰痛などではじまります。発熱後3~4日すると、一旦熱は下がりますが、今度は頭部や顔面を中心に皮膚の色に近い豆粒状の特徴的な発疹・丘疹が現れ、徐々に全身に広がってゆきます。
一週間ほどすると、皮膚表面の発疹が化膿して膿疱となり、再度40度C以上の高熱が出ます。痘そうの症状は、皮膚表面だけでなく、呼吸器や消化器などの内臓にも生じ、呼吸困難や危険な呼吸不全を来たすこともあります。最悪時は死に至ります。
発疹などの症状は2~3週間続き、やがて膿疱は瘢痕を残して治癒に向かいます。
痘そうの病型には致死率20~50%という高致命率のものと、1%程度の低致命率のものとがあります。まれに悪性型や出血型もあり予後は不良です。
痘そうは、1977年にソマリアで発生した患者を最後として、それ以降の発生はなく、1980年5月には根絶宣言が出されました。
南米出血熱
南米出血熱は、感染後の7~14日間の潜伏期間を経て、突然の発熱、筋肉痛、頭痛、悪寒、筋肉痛、眼窩後痛、背部痛、消化器症状などで発症します。3~4日後には目眩や嘔吐が始まり身体は衰弱してきます。
症状が重くなると、高熱や出血傾向、ショックなどの症状を伴い、特徴的な歯肉縁の出血、結膜の充血、皮下や粘膜からの出血による紅斑、紫斑、全身のリンパ節腫大に進展します。神経症状が現れることもあり、手や舌の振戦、せん妄、昏睡、痙攣に至ります。
多くの場合、発症後10~13日後くらいから症状が改善し寛解傾向となりますが、完全に回復するまでには数か月かかります。
南米出血熱の致死率は30%以上です。
ペスト
ペストは極めて感染性の大きい病気で、かつては全世界で何度となくパンデミック(大流行)を起こした病気です。
ペストは極めて高い致死率を持つことからかつては〔黒死病〕とも呼ばれていました。
ペストは元々クマネズミなどのげっ歯類に流行する病気で、人間に流行する前にネズミなどの間で流行する傾向があります。
ネズミに寄生し吸血していた蚤などが人に移り刺してペスト菌を移したり、感染者の排泄物との接触などでも感染します。
ペストは感染後2~5日ほどで、全身の倦怠感や寒気、悪寒がし、高熱が出て発症します。ペストには感染の仕方により〔腺ペスト〕〔ペスト敗血症〕〔肺ペスト〕」〔皮膚ペスト〕という4つの症状パターンがあり、その後の症状は異なります。
〔腺ペスト〕
ペストの典型的な症状で、ヒトペストの80~90%を占めるもので、リンパ腺が冒されて現れる症状です。感染後3~7日の潜伏期間後に突然40度C前後の発熱に見舞われ発症します。頭痛、悪寒、倦怠感、不快感、食欲不振、嘔吐、筋肉痛、疲労衰弱や精神混濁などの強い全身症状を呈し、ペストに感染すると侵入場所付近のリンパ節が壊死、膿瘍を形成してクルミ大に腫れあがります。
〔ペスト敗血症〕
ペスト全体の10%くらいでは、ペスト菌が血流に乗って全身に回り敗血症を起こします。敗血症になると全身の皮膚に出血斑ができ、全身が黒いアザだらけになるのが黒死病と呼ばれる由来です。急激なショック症状、昏睡、手足の壊死、紫斑などの症状が現れ、その後、2~3日以内に死に至ります。
〔肺ペスト〕
かなり稀なケースですが、肺ペストと呼ばれる病型が発生することがあります。ペスト患者の咳などで飛散したペスト菌を吸入して発病するものです。
激しい頭痛や嘔吐、40度C前後の発熱、気管支炎や肺炎を起こし、鮮紅色の泡立った血痰を出しながら呼吸困難となって2~3日で死に至ります。
肺ペストは最も危険なタイプのペストで致死率はきわめて高く、ほぼ100%です。
〔皮膚ペスト〕
稀に、蚤に刺された皮膚、または眼に化膿性潰瘍や出血性炎症を起こすことがあります。この場合は、皮膚ペストは眼ペストなどと呼ばれます。
マールブルグ熱
マールブルグ病は、人獣共通の感染症です。この病気のウイルスを保有する自然宿主は不明であり、現時点では発生した場合の確立された治療法はなく、対症療法のみとなります。
マールブルグ病は、感染後3~10日程度の潜伏期の後で、突発的に発症します。初期症状には、突然の発熱、前頭部と側頭部の頭痛、倦怠感、腰部を主体とした筋肉痛、吐き気、嘔吐、皮膚粘膜発疹、咽頭通などが現れます。 発症してから1~2日後には、水様性の下痢を起こし、40度C近い発熱と激しい嘔吐を繰り返します。同時に昏睡や精神活動に異常を来たします。
マールブルグ病に感染すると、発症第一週中に、口蓋と扁桃粘膜、頚部リンパ節が肥大し、5~7日後には、顔と頸周辺に痒くない暗赤色の斑点状丘疹が発生します。発疹は遠心性に顔面から躯幹、四肢に広がってゆきます。
発症後5~7日目に、消化管、尿路系、膣、結膜からの出血が認められます。その頃には手足などからの落屑が見られます。そして、多くの患者は発症後7~9日目で死に至ります。
過去の事例では、致死率は23~25%です。死を免れ回復した場合でも、長期にわたる〔肝炎〕や〔精巣炎〕〔ぶどう膜炎〕〔横断性脊髄炎〕などが認められることがあります。
マールブルグ病の発症には好発年齢や男女差はありません。
ラッサ熱
ウイルス性出血熱には、〔ラッサ熱〕〔エボラ出血熱〕〔クリミア・コンゴ出血熱〕〔マールブルグ病〕の4種類があります。〔ラッサ熱〕も他の出血熱と同様に、ヒトに感染し皮膚や内臓粘膜に出血を生じます。
ラッサ熱の病原体はアレナウイルス科のラッサウイルスで、マストミスと呼ばれるげっ歯類(ネズミ)が自然宿主です。
ラッサウイルスを保有するネズミの唾液や尿、排泄物に直接接触したり、汚染された食物の摂取、患者の咳などによる飛沫や患者の血液などの接触などで感染します。
ラッサ熱の潜伏期間は5~21日で、突発的で40度C前後の発熱や全身倦怠、頭痛、咽頭痛、吐血、下血などの初期症状で発症し、徐々に進行します。
発症後3~4日目には大関節痛や腰部通が現れ、頭痛、咳、咽頭痛の他、後胸骨痛、心窩部痛、嘔吐、下痢、腹部痛などの症状が見られます。重症化すると、顔面や頚部の浮腫、消化管粘膜からの出血、脳症、胸膜炎、心のう炎、腹水がみられるようになり、時にショックが現れます。
一旦軽快後に2~3か月して、再燃することがあり、回復後に〔聴覚神経(難聴)〕をはじめとする〔知覚神経麻痺〕や〔歩行失調〕の症状が残ることがあります。妊婦では胎内死亡や流早産を起こすことがあります。
西アフリカ諸国で毎年10万~30万人が感染し、内5,000人が死亡しています。感染者の80%は重症で、20%が軽症です。
ラッサ熱には特別な好発年齢はなく男女差もありません。
以上が一類感染症に指定され非常に危険なものばかりです。
ウイルスの脅威をこんなに感じるのは初めてです。
一日も早いエボラ出血熱の終息を願っています。