1868年、日本で最初の篤志献体があった。
それ以降、1970年代半ば迄は1万人台に過ぎなかった年間の献体数が、
2007年には21万人を突破して現在も増え続けている。
そもそも献体とは、医学・歯学の大学で行われる解剖学の教育・研究に
役立たせるのが目的だから、遺体は無条件・無報酬で提供される。
その「解剖学実習」が、医科歯科の最も大切な基礎課程であるにも関わらず、
昭和30~40年代は医学の危機といわれる時代があった。
医科大では2名に1体、歯科大では4名に1体を一つの基準にしていたが、
とても間に合わず、ともすれば基準の5分の1以下だったらしい。
嘗ては、警察から提供を受けた身元不明者が使用されることも多かった
ということだから、そんな時代から見れば、
現在のように篤志希望者による献体で「解剖学実習」のほぼ全てを
賄えるようになったのは凄いことである。
献体増加の理由は、確かに1983年に成立した
「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律(献体法)」の制定や、
解剖に対する抵抗感の薄れがある(TV番組の影響も大きいだろう)。
しかし…その背後には、社会構造の変化で高齢者のみの世帯が増え、
独居老人が増え、要介護高齢者も増え、その上、長引く実質不況感…
一人暮らしの高齢者が全国で急増する姿を浮き彫りにしている…という。
「葬儀代を浮かすため」が支える「献体」は、哀しき高齢化社会…ということだ。
今後も、献体数は右肩上がりを続けるのだろう。